日本郵政公社民営化から1日で1年。県内離島や過疎地の住民は、配達員との関係希薄化や郵便局の役割低下による不便さが増したとの不満を募らせ、不採算による撤退への不安も根強い。多くの離島や過疎地を抱える沖縄に「効率化」のしわ寄せが出始めている。


 竹富島では配達先が不在の場合に郵便物や小包が石垣島の八重山郵便局に戻ってしまうようになった。竹富島の上勢頭保さんは「以前は竹富郵便局に取りに行くか、配達員も顔見知りだったから携帯電話に連絡してくれたりしてすぐ受け取れた。民営化後は不在通知を見たら石垣島に連絡しなければならない。受け取りも遅くなるし困っている」。

 こうした現状をなんとかしようと立ち上がったのがバス会社の竹富島交通。郵政管理事務所との契約で、日に2回郵便物を受取事務所で仕分けし配達している。しかし新田長男社長(48)は「契約料金ではやればやるほど赤字。料金の見直しなどを要望しているが『離島の場合は難しい』と取り合ってもらえない。今の状態ではうちがもたない」と訴える。
 上勢頭さんは「離島の離島では企業も島民も身を寄せ合いながら生きている。都会並みの制度で一律にしてもらっては困る」と憤る。
 宮古島市では、伊良部島への配達で不在の場合は宮古島の郵便事業会社に戻る。配達員は船で渡るため天候の影響で欠航すると配達が遅れる。伊良部地区の下地方幸自治会長は「不在の際に郵便を伊良部郵便局に取りに行ったら、もう宮古島へ渡っている場合がある」と語った。

 国頭村奥区の玉城壮区長は「郵便局内で業務が分かれ、配達員に頼み事をしにくくなった」と話す。郵便貯金以外に現金を扱う機関がなく、奥の郵便局には隣の楚洲や宜名真からも住民が訪れる。採算が取れないと撤退するのではとの不安に駆られる玉城区長。「撤退されると辺土名しか現金を取り扱う機関はない。年金を受け取る高齢者にとって簡単に移動できない距離で負担が大きい」と語った。