「居座り」132件 都心3区の国家公務員宿舎 平成10年以降

■異動後も家族居住

 東京都心の千代田、中央、港の3区の国家公務員宿舎(官舎)に居住している公務員の中に、本人が異動などで都内に住むことができないのに、1年以上本人不在のまま家族などを住まわせて退去しないケースが平成10年以降、132件あることが、関東財務局への情報公開に対する開示で分かった。公務員宿舎は都心部でも1万〜3万円台の格安で居住できる。公益法人や民間企業に天下りした国家公務員がさらに別の法人に再就職し退職金を受け取る「渡り」が問題になるなか、こうした「居座り行為」が事実上許されている厚遇ぶりが今後、議論を呼ぶ可能性もある。(三枝玄太郎)

 国家公務員宿舎法では異動となった場合は半年以内に部屋を明け渡さなければならず、本人が不在のまま退去せず家族などを住まわせることは違法。同法では損害賠償を請求することになっている。宿舎を管理する財務省の見解は「国の要請で単身赴任している場合が多く、一概に違法とはいえない」(関東財務局第一統括国有財産管理官)。

 平成18年1月1日現在、3区には、合同宿舎が11団地、678戸ある。うち、平成10年以降に本人が異動などで都内にいないのに、家族を住まわせるなどして退去していないケースが132件あった。

 省庁別の内訳では、財務省(国税庁、東京国税局などを含む)が25件、法務省(東京地検、東京高検、最高検を含む)が20件、警察庁が17件、国土交通省が12件、文部科学省が12件。

 本人不在が長期にわたったケースでは麹町宿舎の大蔵省関税局(当時)の職員が10年10カ月間。この職員は、横浜、沖縄地区、長崎、名古屋の各税関に異動、平成元年7月から12年4月まで東京から離れていたが、退去しなかった。

 「居座り行為」が昨年10月現在で続いていた宿舎は25戸あり、内閣府の職員の場合は、13年7月から奈良県に異動していた。

 国家公務員宿舎法18条では、異動などがあった場合、20日以内に部屋を明け渡さねばならない。「相当な事由があるとき」に限り、半年まで延長できる。その後、立ち退かない場合は損害賠償金を請求することになるが、「(賃料の)3倍を超えることができない」規定がある。

 だが実際は、異動を伴った場合は国家公務員宿舎法施行令で正規の賃料の「1・1倍」払えばいいことになっており、損害賠償は有名無実化している。「居座り行為」が続く背景のひとつには子供の学校の問題などがあるとされる。

 公開資料によると、四番町住宅(千代田区)の賃料は約56平方メートルで約1万4000円、約68平方メートルで約2万6000円。

 都心部の官舎に国家公務員が低賃料で住むことにはかねて批判があり、小泉内閣時には、東京23区の有料宿舎を順次廃止することを決めた。

 また、すぐに省庁に駆けつけなければならない危機管理要員を無料で住まわせる「無料宿舎」を増やす一方、財務省は都心の官舎を減らし、郊外に整備する計画を進めている。

 昨今の雇用をめぐる問題で住居を追い出される労働者の問題がクローズアップされるなか、政府には、官舎への「居座り行為」の解消に向けた対策が求められることも予想される。