篠沢一男 宇都宮・宝石店放火殺人事件

imagessinozawakazuo死刑囚 篠沢一男

事件当時年齢  49歳

犯行日時    2000年6月11日

罪 状     強盗殺人、現住建造物等放火

死刑執行    2010年7月28日

宝石店放火殺人事件 経緯

平成12年6月11日午後7時30分頃、栃木県宇都宮市のジュエリーツツミ宇都宮店に自称産業廃棄物処理会社相談役の篠沢一男(当時49歳)が入店してきた。篠沢は以前同店で貴金属を購入した実績があり店長や店員らと面識があった。篠沢はこの日の午後5時頃に一度同店を訪れて「1億5000万円分の取引をしたい。現金で購入するから商品を用意してくれ」と店長に伝えていた。

店長の荒井紀美子さん(当時49歳)は、以前も同様の取引を篠沢から持ちかけられたが、その時は篠沢がいう産業廃棄物会社の実体が無かったことから取引には至らなかった。だが、今回は現金で購入するという篠沢の言葉を信じて取引に応じた。

荒井店長は1億円以上の商品を揃えるには時間がかかるため、改めて7時30分頃に来店して欲しいと篠沢に伝えた。このため、篠沢は改めて指定時間に再び同店を訪れたのだった。この時、荒井店長の他、松山名美子さん(当時51歳)、堀美知子さん(当時51歳)、久野みち子さん(当時41歳)、立川正恵さん(当時24歳)、浅沼祥子さん(当時22歳)の5人の店員がこの取引のため残業をしていた。

篠沢は、大きなブランドのバックを持参して「この中に1億5000万円が入っている」と荒井店長らを騙して、バックの中に1億4000万円余りの貴金属類を入れさせた。その直後、篠沢は「動いたり、騒いだりすんじゃねぇぞ」と怒鳴りつけ凶悪犯に豹変した。その後、荒井店長ら6人を粘着テープで縛り上げ店舗奥の休憩室に押し込んだ。

すると、篠沢は持参したオイル缶からガソリンを6人の全身や付近の床などに撒いて放火して逃走した。同店はたちまち猛火に包まれた。通報で急行した消防車17台が懸命の消火作業を行ったが鎮火したのは翌日の午前0時15分頃だった。直後、消防署の現場検証で炭化した男女の区別もつかない6体の焼死体を発見。更にオイル缶が発見されたことで放火と断定した。直ちに栃木県警は放火殺人事件として捜査を開始した。

篠沢一男 逮捕

栃木県警は篠沢が容疑者であると断定するには時間がかからなかった。それは以前、篠沢が貴金属の取引を持ちかけたときジュエリーツツミ本社が身元調査した結果、かなり要注意人物であると認定し宇都宮店に注意を促していたこと。だが今回は現金取引をしたいとの申し出があったことは本社でも確認していた。また、放火後にズボンの裾を燃やしながら同店から出てくる男の映像が商店街のカメラに映し出されており、その容姿が篠沢に酷似していたこと。このことから、栃木県警は篠沢が犯人であると断定し行方を追った。

栃木県警は篠沢の身辺捜査をした結果、愛車であるポンティアックが東武宇都宮駅前の立体駐車場に駐車していることが判明。このため捜査班は同駐車場を監視した結果、翌日12日午前11時30分頃、駐車場に現れた篠沢に任意同行を求め、取調べの結果強盗及び放火殺人容疑で逮捕した。

篠沢は栃木県小山市で出生。高校を中退したあと関西の蕎麦屋に就職。その後、地元に戻り父親の援助でうどん屋を開業したが長続きせず休業。その間、父親の脛をかじって外車を乗り回し、愛人を月10万円の手当で囲っていた。だが、無職の篠沢にいつまでも派手な生活が続く訳が無く、一攫千金を狙って犯行に及んだ。

宝石店放火殺人事件 公判

宇都宮地裁は「周到に準備された計画的犯行で、動機はあまりにも利己的。自己中心的で情状酌量の余地は微塵も無い」として篠沢に死刑を言い渡した。これに対して篠沢は「脅すつもりでライターに火をつけたらガスが充満して引火したもの。殺意は無かった」として控訴した。

平成15年4月23日東京高裁は篠沢の控訴を棄却。篠沢は上告したが平成19年2月20日最高裁は、「冷酷、残虐極まりなく、最愛の母、妻、娘を突然奪われた遺族の処罰感情は非常に厳しい」と断じて上告を却下した。これで、篠沢に死刑が確定した。
享年 59歳