冥王星の大気に一酸化炭素を確認

冥王星は単に遠くて冷たいばかりか、最新の観測データによれば、非常に有害な一酸化炭素を含む大気で覆われていると改めて確認された。

 10年以上前の観測で、確定的ではないものの冥王星の大気に一酸化炭素が存在する証拠が見つかっていた。

 ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡の観測データに基づく今回の研究では、一酸化炭素の存在が確認されただけでなく、2000年の観測時に比べて一酸化炭素の量が倍増していたことが明らかになった。

 研究を率いたイギリス、セント・アンドリューズ大学の天文学者ジェーン・グリーブス氏は、「地球でそんな(大気成分が何倍にもなる)ことが10年の間に起こるかどうか考えてみて欲しい」と話す。地球でそのような変動が自然に生じるとはとうてい考えられない。

 冥王星の大気はとても薄く、大気圧は地球の100万分の1程度だが、大気層は比較的厚い。冥王星自体の直径は2300キロ程度しかない。そして今回の研究により、冥王星の大気層の厚みが、この10年間で100キロから3000キロに増えたことが分かった。実に最大の衛星カロンまでの距離の4分の1に及ぶ。

 天文学者らは大気の膨張について、冥王星の過酷な季節変化によるものではないかと考えている。

 冥王星の公転周期は248年で、楕円軌道を描いているため、太陽との距離が大きく変化する。1989年に近日点を通過し、太陽との距離は44億キロ以内にまで近づいた。「おそらく(太陽から受け取った熱量の)多くが、冥王星の大地に吸収された」とグリーブス氏は語る。冥王星の表面は氷に覆われているため、表層物質の一部が昇華(固体から直接気化)して、薄い大気を膨張させたと思われる。

 太陽風(太陽が常時放出している荷電粒子の流れ)によって、いずれは増大した大気の一部は吹き飛ばされてしまうだろう。また、太陽と冥王星の距離が離れるにつれて温度が下がり、吹き飛ばされなかった大気のうち、一部の成分は凍って雪のように降り積もる可能性がある

 グリーブス氏は太陽周期に言及し、「冥王星の大気は、太陽の周期に非常に強く反応していると思う」と語った。太陽の磁気活動はおよそ11年周期で変動し、宇宙天気と太陽フレアが変化する。

 ただし、前回の観測データが11年前のものとはいえ、今回と大気構成が異なる点については、「現時点ではまだ分からない要素ばかりだ」という。

 予想以上に多くの一酸化炭素が存在すると分かったが、それは冥王星が持つ大気圏のごく一部に過ぎない。冥王星の大気は、地球と同じくほとんどが窒素だ。将来、宇宙飛行士が何らかの形で冥王星までの長旅と、摂氏マイナス220度という極寒に耐えることができたとして、冥王星の大気を吸い込んでも害はないのだろうか?

「うっかり熱を加えれば一酸化炭素が発生し、たいした量を必要とせず死に至る。どうなっても僕は知らないよ」とグリーブス氏は語った。

 冥王星の大気に関する今回の研究は、ウェールズで開催中の王立天文学会の会合で4月19日に発表された。