米国 パレスチナ国境「67年以前」に 大統領が中東演説

20110520-00000411-yom-000-4-viewオバマ米大統領は19日午後(日本時間20日未明)、米国務省で新たな中東政策について演説した。中断したままのイスラエル・パレスチナの和平交渉について「イスラエルとパレスチナの国境は、1967年の国境線に基づくべきだ」と述べ、67年の第3次中東戦争以前の境界線を基本にパレスチナ国家は独立すべきだとの見解を初めて公式に示した。また、反体制デモ弾圧が続くシリアのアサド大統領に対して「変革を主導するか退陣するかだ」と選択を迫った。

 第3次中東戦争でイスラエルは、ヨルダン川西岸、東エルサレム、ガザ地区を占領し、その後占領地でユダヤ人入植地を拡大してきた。大統領は今回、原則的にイスラエルに入植地からの撤収を求めたことになる。20日にワシントンでオバマ大統領と会談予定のイスラエルのネタニヤフ首相は反発している。

 大統領はパレスチナに対しては、9月の国連総会で国家承認決議採択を求める動きを戒めるとともに、統一政府に加わる予定のイスラム原理主義組織ハマスを非難した。大統領はイスラエルとパレスチナの共存に向け一応の指針を示した形だが、イスラエルはハマスとの和平交渉を一切拒絶しているため、交渉再開のめどは立っていない。

 一方、シリアのアサド政権について米政府は従来、イスラエルとの和平交渉に前向きなアサド政権の崩壊が包括的な中東和平の停滞やイランの影響拡大につながることを懸念し、デモ弾圧を非難しながらも抑制的な態度をとってきた。だが、18日にアサド氏本人の米国管轄下の資産を凍結する制裁を発動。演説でオバマ大統領は、アサド氏が民主化を進めなければ「内外で孤立するだろう」と述べ、圧力を強化する姿勢を鮮明にした。