ビンラーディン殺害 東南アジア波及は… 米系施設標的に回帰も
国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者の殺害が、歴史的にアルカーイダとの関係が深い東南アジアのテロの動向に、いかなる影響を及ぼすのか−。専門家の間では、過激派の標的が一時的に、米国系のホテルなどへ「回帰」し、アルカーイダへの接近の力学も働くとの見方が強い。1988年、フィリピンのマニラに拠点を置いたアルカーイダは、東南アジアのイスラム系テロ組織、ジェマ・イスラミア(JI)や、モロ・イスラム解放戦線(MILF)との連携を深めたが、2006年以降、関係は疎遠になっていた。
その理由について、オーストラリアのウーロンゴン大学准教授、アダム・ドルニック氏は「JIは活動の目的を、インドネシアにおけるイスラム国家の樹立に絞り、アルカーイダとの東南アジア地域における広域テロ活動と一線を画し始めた。MILFはフィリピン政府と和平交渉を続け、アルカーイダと疎遠になった」と説明する。
こうした中、ビンラーディン容疑者が殺害されたが、今回、東南アジアのテロとの関係で注目されているのは、2002年のバリ島爆弾テロに関与したとされるオマール・パテック容疑者(今年1月にパキスタンで拘束)が、ビンラーディン容疑者の隠れ家があったパキスタン北部アボタバードに潜伏していたという事実だ。
東南アジア研究所(シンガポール)の上級研究員、ダジット・シン氏は「JIはいくつかのグループに分派したとはいえ、アルカーイダとの関係を保っている者もおり、そのひとりがパテック容疑者だ」と指摘、東南アジアのテロリストとアルカーイダのつながりに警鐘を鳴らす。
そしてビンラーディン容疑者殺害の報復として、国際危機グループ(ICG)のシドニー・ジョーンズ氏は、「標的は一時的にローカルなものから、かつての米国系のホテルやファストフード店へ移るだろう」「(殺害は)インドネシアの過激派とアルカーイダとのつながりを強めさせ得る」との見方を示している。