「麻酔誤り1歳児死亡」 両親、京都府立医大病院提訴へ

京都府立医科大付属病院(京都市上京区)で平成20年、精密検査中に1歳1カ月の次男を呼吸不全で失った両親が、病院側に約3400万円の損害賠償を求める訴訟を12月1日に京都地裁に起こすことが29日、分かった。両親は「ミルクと全身麻酔薬を同時に与えたことが不適切だった」と主張。一方、病院側はミスを認めず、真っ向から争う姿勢をみせている。

 提訴するのは、京都市西京区の会社員、福田真也さん(40)と妻(34)。訴状などによると、20年9月10日、同病院で先天性の病気の経過観察中だった次男の健真(けんしん)ちゃん=当時1歳1カ月=の発育状況を調べる精密検査の際、医師が睡眠薬1種と全身麻酔薬2種を与えた結果、呼吸が停止して翌11日に呼吸不全で死亡した。

 健真ちゃんは生後、自力で食物から適正に銅を取り込めない病気に罹患(りかん)。同病院で銅のワクチンを投与する治療を続け、発育は順調だったが、小児科の医師から「念のため」として発育状況を調べる精密検査を勧められたという。

 正確なデータを取るため眠らせようと、医師はミルクと一緒に睡眠薬を与えたが効かなかったため、さらに全身麻酔薬を注射。それでも効かず、別の全身麻酔薬を注射したという。

 両親側は「飲食物と麻酔薬の混合はタブーのはず。3種類もの睡眠薬と麻酔薬を乳幼児に投与すれば、呼吸が停止する危険性が高いことを予見できたはずだ」と主張。「麻酔科の医師が立ち会っていれば蘇生(そせい)などの措置ができ、死には至らなかった」としている。

 一方、病院側は「亡くなったことは残念。精いっぱい処置をしたつもり」としながらも、「これまで病院で行ってきた方法で睡眠薬と麻酔薬を投与した。直接的な死亡原因とは考えていない」と反論している。

 日本小児麻酔学会会長の竹内護(まもる)・自治医科大麻酔科主任教授は「一般的に全身麻酔前は飲んだり食べたりしてはいけないのが共通認識。多くの病院で麻酔科医が足りないなどの理由で、小児科医が検査の麻酔を行っているのが現状だ」と話している。