大阪・橋下市長、「塾代補助構想」発表 東京都でも補助事業行うも利用者は少数

経済格差が学力格差につながることを解消しようと、大阪市の橋下市長が、新たな構想を打ち出した。
橋下市長は10日、就任後初めて、大阪市の教育委員会と意見交換をした。
橋下市長は「教育現場の独走。全く保護者の求めている価値を実現していない。塾代の助成をしてほしい」と述べた。
そこで、橋下市長は「塾代補助構想」を打ち出した。
各家庭に「塾代補助クーポン」を支給し、小・中学生の学習塾代など、学校以外にかかる教育費用を補助しようというもの。
狙いについて、橋下市長は「経済的な格差によって、学力格差がつかないように政策をつくっていく」と述べた。
今、家庭間の経済状況の格差によって、子どもの学力にも格差が生まれつつあるという。
教育評論家の尾木直樹氏は「日本は、世界で最も経済格差が教育格差につながっている国」と語った。
東京大学(2010年)に在学する学生の両親の収入を見てみると、51.8%が年収950万円以上(2010年)。
一方、450万円未満は16.6%だった。
さらに、私立大学(2009年)では、200万円未満が17.6%と、経済状況による差は明らかになっている。
橋下市長が打ち出した塾代補助構想は、学力格差解消の一手となるのか注目される。
学習塾「栄光ゼミナール」の横田保美室長は「塾で学ぼう、学校以外の場所で学びたいと思っている子どもたちに、支援をしていくということは、社会全体でも必要だと思う」と語った。
栄光ゼミナールの費用は、中学3年生で年間40万円ほどとなっている。
全国的に見ても、学習塾の費用は、平均40万円前後と、親の負担が決して小さくない。
子どもを塾に通わせる親は、「(塾の費用は年間)80万円くらいですかね。もう、すごく負担です」、「下の娘で、(年間)200万円くらい。基本的に蓄えを崩してっていう形で」などと語った。
こうした中、塾代補助の取り組みは、東京都でも行われている。
東京都では、2008年から学習塾の費用を補助する「受験生チャレンジ支援貸付事業」を行っている。
受験生チャレンジ支援貸付事業とは、中学3年生と高校3年生などを対象に、塾の費用など20万円(上限)を貸し出すというもの。
さらに、高校や大学に入学した場合、返済は免除されるという。
しかし現実には、所得制限や手続きの煩雑さなどから、利用は7,200件にとどまっている。
親は、「そういう補助が、制限なしであってくれると助かる。学校教育だけで、本当に大丈夫なら、いいんですけど」、「塾とかは外せない。やっぱり行かせなきゃいかなくなるのかなと」などと語った。
いまや、学力向上や受験とは切り離せない存在の塾。
しかし、今問われているのは、学校教育が果たすべき役割だという指摘もある。
尾木氏は「学校教育で足りなくて、塾で補完していかないと、学力、高学力が得られないという、今の教育の実態そのもの(が問題)。経済的に恵まれていない子の学力も保障するという、学校機能を果たすことの方が大事なんです」と語った。
塾代補助をめぐる動きは、どこまで広がりを見せるのか。
それは、学校教育のあり方とも、密接な関わりを持つ課題となっている。