横領公判 大阪地検、無罪求める論告 即日無罪判決

宅配ロッカーから配達物を横領したとして業務上横領罪に問われたアルバイト郵便配達員の男性被告(24)の公判が10日、大阪地裁(福島恵子裁判官)であり、検察側は「男性の犯行とは証明できない」として無罪を求めた。検察側の無罪論告は極めて異例で「33日間にわたり身柄拘束し誠に申し訳ない。今後このようなことを起こさない所存です」と謝罪した。福島裁判官は同日午後、無罪判決を言い渡した。

 ロッカーの開閉などを感知するセンサーの記録が立証の柱だったが、公判で記録時刻の誤りが判明した。弁護側は「犯人と決めつけられ強引な捜査が行われた。他の証拠を集める様子もなく自白を求められた」と述べ、刑事補償を求める方針。

 弁護人や起訴状によると、男性は11年6月24日、車のルームミラー(5390円相当)を大阪市内のマンションに配達した際、相手が不在だったため、午後2時48分ごろにマンションの宅配ロッカーに配達物を入れたが、その直後に持ち去ったとして、大阪府警が同年9月に窃盗容疑で逮捕、大阪地検が業務上横領罪で起訴した。男性は否認していたが、保釈されるまで約1カ月間、勾留された。

 公判で検察側は、配達物がロッカーから取り出された際にセンサーが記録した時刻が午後2時48分だったと主張。配達物を入れた時刻と出した時刻が同じだとして、男性が持ち去ったと認定した。これに対し男性は「ロッカーに配達物を入れた後、扉を閉めることができず、そのまま帰ったが持ち去っていない」と反論。このため地裁は検察側に補充捜査を求めた。

 検察側が今年6月、ロッカーのセンサー記録システムの設計者に尋ねたところ、扉を閉めずに放置すると、配達物が取り出されても、扉を閉めずに放置した時刻が誤って記録されることが判明した。【渋江千春、堀江拓哉】

地検と府警「申し訳ない」

大阪地検の大島忠郁次席検事は10日午後、「もっと注意深く証拠を見ていれば気づくことができた。不十分な証拠で起訴し、身柄を拘束したことは申し訳ない。真摯(しんし)に反省し、基本に忠実な捜査を徹底するよう検察官らを指導する」と述べた。

 大阪府警の岩本俊行刑事総務課長は「このような事態を招いたことについて、申し訳なく思います。今後、十分な捜査を尽くし、二度とこのようなことを起こさないよう努めます」とコメントした。