基地・TPP横並び…地元候補、争点にせず

今回の衆院選では、重要な争点の「現場」で候補者の論戦が深まらない。

 米軍基地が集中する沖縄では、主要各党の候補者が米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設についてそろって「県外移設」を主張。農業王国の北海道でも、環太平洋経済連携協定(TPP)の参加を巡って民主、自民などの候補が軒並み「反対」している。選挙戦で不利になることを恐れていると見られるが、もどかしく感じる有権者も少なくない。

問題を回避

沖縄県名護市で5日に開かれた、自民新人候補の集会。時間を割いたのは医療や福祉などの話題で、普天間飛行場の同市辺野古への移設問題について突っ込んだ発言はほとんどなかった。参加した沖縄市の会社員(58)は「世論を気にして避けたとしても、政権を担えば基地問題と向き合わざるを得なくなるのに」とため息をついた。「ちゃんと選択肢を示してほしかった」

 移設問題を巡って、別の自民新人候補は独自の判断で、選挙パンフレットに党方針とは異なる「県外移設」を明記した。4日の街頭演説でも「本土が沖縄に甘えるような、いびつな形を解決したい」と主張、基地負担の軽減を訴える。

 基地問題が大きくこじれたのは民主党政権から。鳩山元首相の「最低でも県外」発言で普天間の移設問題が頓挫。結局、県内の辺野古移設に戻ったが、失望感を募らせた県民の多くが「県外移設」を求めるようになり、辺野古移設容認だった自民党県連も「県外移設」に転換した。

 4日に沖縄で街頭演説を行った自民の石破幹事長は「党本部と沖縄との間にまったく齟齬(そご)はない」と言ったが、新人候補の主張は異なる。「沖縄の世論がここまで『県外』に傾いた以上、辺野古移設は無理だ」

 移設問題に対する姿勢は民主の候補も同様で、県内の2選挙区に擁立された新人は、普天間については党本部の方針とは逆に「即時閉鎖」。食い違う主張について、同党県連幹部は「党本部を変えていくことが県連の使命だ」と説明する。

「無風状態」

「国内で議論が尽くされていない。絶対間違った方向に行かないように、みなさんに約束します」。北海道岩見沢市で4日行われた民主前議員の第一声。応援演説を終えた同党の細野政調会長がその場を去ると、党が掲げるTPP推進を「誤り、間違い、論理矛盾」と断じた。

 民主道連は党本部と正反対の立場で、地域版公約で「反対」を明記する念の入れようだ。民主以外の候補者も、ほとんどがTPP反対を掲げており、道内ではTPP問題は事実上、「無風」の状態だ。

 民主、自民の各党がTPPについて立場が横並びの状態に、置戸町の畑作農家の男性(58)は不安そうに語った。「地元ではそろって『反対』だと言っても、選挙後にはいったいどうなるのか」