年収70万円以下? 客の金に手を出す貧乏弁護士の懐事情

5〜6年前に大量発生した消費者金融の過払い金返還訴訟。その“バブル収入”も今は昔となった弁護士業界では、特に都市部に拠点を置く面々の窮乏ぶりが顕在化している。

仕事が増えぬ一方で、司法改革で弁護士が急増したせいとされるが、大手事務所でも給与を遅配したり、賃料の支払いに難渋しているとも囁かれ、個々の弁護士も、事務所に居候する“イソ弁”どころか、籍だけ置く“ノキ弁(軒先)”、寄り合いでアパートを借りる“アパ弁”、ケータイ1つで徘徊するケータイ弁等々、最難関資格の名が泣くような呼び名が拡散している。

「そんな奴は見たことないぞ」と首を傾げる同業者もいるが、実際にジリ貧の一端を示すデータはある。

国税庁の統計によれば、2009年の東京を拠点とする弁護士1万5894人のうち、年間所得70万円以下が実にその3割に当たる4610人もいるのだ。

「その2年前に比べて倍増。地方と比べても突出しています。東京の弁護士は、異様なくらい食えてない」

ある若手弁護士はそう嘆く。無論、純粋な売り上げではなく経費を差し引いた申告所得だから、経費を水増ししている可能性も十分にある。が、節税に長けた弁護士がいきなり倍増したとは考えにくい。

「月10万円のワンルームにパソコン、ケータイ。ライフコストが最低20万円として、1件7万〜8万円の国選弁護人を月に2〜3件こなせばギリギリ回せる。刑事事件は打ち合わせ場所が警察か拘置所だから事務所は不要(苦笑)」(同)。割に合わないと敬遠されてきた国選も、今は「朝9時に弁護士会館で公開され、そこに弁護士が殺到して奪い合う状態」(都内の中堅弁護士)という。

東京で仕事をする弁護士の場合、日本弁護士連合会(日弁連)を筆頭とした2次団体・3次団体にそれぞれ月数万円の会費を支払わねばならない。この“上納金”が払えずに弁護士登録すらできない者も多い。登録しなければ弁護士の業務はできないから、まさに八方塞がりだ。

「よくニュースになるのが、依頼客からの預かり金の使い込み。バレたら即死(除名処分)です。事務所の経費に困っているからか、年配の先生に多い」(中堅)

業界全体がそんなジリ貧状態だから、ルーキーもつらい。司法試験合格者がここ数年、毎年約2000人。弁護士志望者1600〜1700人中、400人以上が“就職浪人”だという。

「日弁連は、登録した者の動向しか把握できない。登録していない連中が何をしているのかは不明」(同)

弁護士業界では、車内広告やCMを出すにはまだまだ抵抗がある。ネット広告で取れる客は、「多重債務、離婚相談、交通事故の3つだけ」(同)。口コミやリピーター以外の客をつかむ場といえば、弁護士が主催する一般人相手の「法律相談」だが、今は客足が激減している。

「弁護士会のすぐ近くで、法テラス(日本司法支援センター)が無料で法律相談をやっている。そりゃ、タダのほうに流れますよね」(若手)

法テラスは、国が運営する相談窓口。一般人には有り難いが、相談相手である弁護士の報酬は7万〜10万円と一律に低く抑えられている。

「でも、仕方なく仕事を貰っていますよ。法務省の管轄である法テラスの“犬”と化してます」(同)

貧すれば何とやら、在野精神どころではない現状をどう打開する?