尼崎連続変死 相談10件捜査せず 兵庫県警が検証

◇関係者の処分は見送る方針

 兵庫県尼崎市の連続変死事件を巡り、遺体で見つかった仲島茉莉子(まりこ)さん(当時26歳)の友人の相談を県警明石署が捜査しなかった問題で、県警はこの件も含め、一連の事件に絡む事前の相談や通報が計約10回あったとする検証結果をまとめたことが分かった。いずれも捜査はされず、事件の端緒を逃す結果となった。県警は「やむを得ない対応だった」と結論付け、関係者の処分は見送る方針で、近く公表する。

 捜査関係者によると、自殺した角田(すみだ)美代子元被告(当時64歳)らに離散へ追い込まれた滋賀県や尼崎市などに住んでいた一家は1998年以降、西宮市内などでの生活や家族間の暴力を強いられた。

 このうち親族の1人が98年、兵庫県警甲子園署に3回にわたり相談していたが、捜査にはつながらなかった。

 また、美代子元被告らは03年、高松市の一家宅から、茉莉子さんらを尼崎市に連れ出し、同居生活を強制したとされ、茉莉子さんは08年12月に殺害されたとみられる。

 茉莉子さんの父、谷本明さん(61)は04年、県警尼崎東署に2回、美代子元被告らとのトラブルを相談。1回目は04年2月で、谷本さんのもとに県警から「あなたの車が尼崎市の民家前に止まっている」と連絡があり、谷本さんは車が保管された尼崎東署を訪れ、「車は美代子元被告のいとこ李正則被告(38)=殺人罪などで起訴=が勝手に乗って行った。事件にできないか」と相談した。署員は「親族間のこと」と捜査しなかったという。

 谷本さんが04年夏に尼崎市に転居し、同年9月に再び同署を訪れて茉莉子さんが行方不明になったと相談し、捜索を依頼したが、署員は捜査しなかったという。

 21日に県警から検証の説明を受けた谷本さんは、毎日新聞の取材に対し「尼崎東署があの時、動いてくれたら事件はここまでにならなかった。茉莉ちゃんも死なずに済んだ。そういう思いがこもった検証をしてほしかった。納得がいかない」と話している。

 この他、06年には、兵庫県内の運転免許更新センターの警察官が、美代子元被告らから逃げ出した茉莉子さんが来訪したことを、承諾なく美代子元被告側に電話で伝えたり、茉莉子さんの友人の相談を明石署が「家族間の問題」として取り合わなかったことが判明している。