お上の勝手で無駄が際立つ 二重ローン解決機構の行方

止まっていた時計の針が、ようやく進みそうである。今月初め、自民党と公明党が安倍晋三首相に提言書を提出。いわゆる「二重ローン問題」の解決のためにつくられた二つの機構で重複する業務を、一元化すべきとの提案がなされたのだ。

提言書では、両機構の「役割分担の見直し」という表現にとどまったが、当然、その先には「統合」の二文字がちらついている。これを機に、長らく水面下でくすぶっていたこれらの議論が進みだすのではないかとみられている。

 復興に向けて再スタートを切りたいのに、震災前に負っていた借金が重荷になって新規融資が受けられない──。両機構はそんな二重ローンに対する被災者の悩みを解消すべく、旧債務を金融機関から買い取って元利返済の一時凍結などを行う機関としてつくられた。

 初めにできたのが、中小企業庁が主導した産業復興機構。ただ、これは地域金融機関も一部出資するファンドであるため、再生可能性の高い案件しか扱えない。

 それを当時の野党が問題視し、間を置かずして発足したのが、国が全額出資し、復興庁が管轄する東日本大震災事業者再生支援機構だ。震災前に赤字だった企業の支援も可能にするなど、大幅に間口を広げている。

 もっとも、被災者からしてみれば二つの機構に分かれている意味などなく、むしろわかりにくいだけという指摘は絶えない。

 案件の紹介など、両機構は協力体制を敷いているが、金融機関は基本的に、まずは産業復興機構側に案件を持ち込むことになっている。このため、震災支援機構でしか買い取れない案件の場合は時間のロスにしかならない。

 この2機構問題は、震災支援機構の設立当初から問題視されており、震災支援機構への統合を求める声も上がっていた。具体的な議論に発展しなかったのは、「中企庁のプライドが邪魔しているから」(銀行関係者)だとされる。県の商工会議所などに協力を仰いできた手前、畳みづらい面もある。

業容の差も縮みつつある

ただ、中企庁の思いを抜きにしても、統合は簡単なことではない。

 実は震災支援機構の発足当時、震災支援機構が産業復興機構に申し出た人の派遣を中企庁が「責任の所在があいまいになる」と断ったことが、しこりを残した面がある。また、産業復興機構と震災支援機構はライバル意識も強い。「それぞれに出向した同じ銀行の行員同士でさえいがみ合う」と、ある金融機関関係者があきれるほどだ。

 両機構に出向者を出さねばならない銀行側からも、「『そんなに人を出せないから一つにしてくれ』という声が何度となく出る」(金融庁)。加えて、「支援の決定件数で震災支援機構に後れを取っていた産業復興機構が、件数を稼ぐために買い取りの間口を広げている」(銀行関係者)ことで、最近は、業容の差も縮まりつつあるという。

 そうなるとますます機構が二つ存在する理由はない。被災者救済の大命題をよそに組織の論理でこれ以上、時間を空費することは許されない。