タクシー 減車義務化 運転手労働条件改善へ自公民が法案

20130818-00000017-mai-000-3-view◇規制緩和 抜本見直し

 自民、公明、民主3党は、国がタクシーの台数制限を事実上義務づける「タクシーサービス向上法案」で合意した。規制緩和による競争激化で悪化した運転手の労働条件の改善が目的。これまでの事業者による自主的な供給削減(減車や営業時間の制限)では不十分と判断した。秋の臨時国会での成立を目指す。「小泉構造改革」の象徴の一つだったタクシーの規制緩和を抜本的に見直す。

タクシーの規制緩和を巡っては供給過剰による運転手の待遇悪化が格差拡大の象徴としてたびたび指摘されてきた。このため、2009年には都市部で自主的な減車などを3年以内に行うよう促す「タクシー適正化・活性化法」が成立した。

 ただ、減車を一律に割り当てると独占禁止法に抵触するカルテルにあたる可能性があるため、適正化・活性化法は自主的な取り組みを促すにとどまった。協力しないタクシー業者への強制措置もなかった。

 このため、新法案は、国が指定する特定地域の協議会とタクシー事業者に減車や営業時間の制限など輸送力の削減方法を盛り込んだ計画を国土交通相に提出するよう義務づけ、計画に基づく削減は独禁法の適用除外とすると明記。協議会に不参加の事業者にも、国が地域の計画に沿うよう勧告・命令でき、従わない場合の営業停止や許可取り消しも盛り込んだ。

 また、特定地域内の新規参入や増車は現在は認可制だが、期限付きで「禁止」に強化。運転手の賃金低下につながる過度の運賃値下げ競争を防ぐため、国交相が特定地域ごとに運賃の幅を定め、事業者はその範囲内で料金を決める新たな仕組みも盛り込んだ。

 今回の新法が成立すれば、小泉改革下でのタクシーの規制緩和の内容はほぼ否定される。規制緩和による自由競争で経済が活性化し全体が底上げされるという小泉改革の基本的な考え方に一定の限界があることを与党も認めた形だ。

 業界内でも過当競争に対する嫌気があり、国の強力な規制の復活で一部業者の「抜け駆け」が封じ込められれば、横並びでの減車に応じるとみられる。ただ、規制でタクシー運賃が下がらなくなる一方で、運転手の実質的な労働条件改善につながらなければ、消費者軽視という批判を受ける可能性もある。

ことば【タクシーの規制緩和】

タクシーは小泉政権下の02年2月に施行された改正道路運送法で参入が原則自由化され、台数は01年度の約20万8000台がピーク時は22万2500台まで増加した。09年度の適正化・活性化法施行で11年度には19万6500台まで減少。一方で、景気低迷による利用者の減少が著しく、タクシー運転手の平均の年間所得は291万円と01年度を43万円下回っている。