メッツはなぜ松坂を獲得したか

20130825-00000006-sanspo-000-3-view米大リーグのメッツが22日、シーズン残りのローテーションを強化するため松坂大輔投手との契約にサインしたと発表したとき、まず思い浮かんだ疑問は「なぜ」だった。

 ジェレミー・ヘフナー、ジェンリー・メヒアと、このところ故障者が続いているとはいえ、メッツはほかに投手を必要としていなかった。プレーオフ進出には程遠く、残る5週間には、将来に備える以外の意味はない。それに、カルロス・トーレスなら簡単に先発陣に横滑りできたかもしれない。

 結局のところ松坂に関しては、獲得すべき理由があったというよりは、獲得すべきでない理由がなかっただけのことだ。ばかばかしく聞こえるかもしれないが、メッツが彼を獲得したのは基本的に、契約が可能で、そうしない正当な理由がなかったためだ。

 32歳の松坂は、ボストン・レッドソックスで6シーズンを過ごしてきた。

 23日にシティ・フィールドで行われたタイガース戦に先発した松坂は5イニングを投げ5失点を許し、メッツは1対6の負けを喫した。ミゲル・カブレラに浴びた3ランなど、松坂の失点は1、2イニングに集中している。

 最後に10人の打者からアウトを取ったが、信頼を勝ち取るには至らなかった。だが、誰かが投げなければならないのだ。松坂で何が悪い。

 ゼネラルマネジャーのサンディ・アルダーソン氏は「2014年を想定した先発ではなかった」と述べた。「残りの先発要員にとって適切なローテーションを作るためであり、彼が投げる試合で同じくらいの戦力を保つための措置だ」という。

 だが、話はそれほど単純ではない。メッツにとって松坂との契約は必須ではなかったにしても、彼が「最良の選択肢」だと考えた理由をアンダーソン氏はいくつか挙げた。

 まず、松坂は若手投手の(今後の)出番を奪わないだろう。それはチームを立て直すうえで重要な要素だ。メッツには、今期メジャーで投げられたかもしれない有力な候補が数人いたが、いずれも投げられるイニングの上限近くに達している。この点を考慮して、ジェイコブ・デグロム、ラファエル・モンテロといった投手が選択肢から外された。

 メッツは、6回先発させたことのあるクリス・シュワインデンなど、マイナーリーグの投手に目を向けても良かった。だが、メッツ傘下の3Aと2Aのチームがペナントレースを戦っており、シュワインデンは両チームの優勝の可能性をつぶしたくない意向だとアルダーソン氏は述べた。

 トーレスについてメッツは、リリーフから外したいと本気で考えたことはなかった。23日の登板前の防御率はリリーフ時が31イニングで1.45。これに対し、3回の先発での防御率は6.43だ。

 そのためメッツは、クリーブランド・インディアンス傘下の3A、コロンバスで1シーズンを費やし、契約を解除すると決めた松坂に飛びついた。松坂を先発に、トーレスをリリーフに置くことで、今年の(残り)試合に勝つチャンスが最大になると読んだのだ。72勝でシーズンを終えても75勝でも大差はないかもしれない。だが、いずれにせよ松坂は将来をささげるわけではないのだから、試してみてもいいではないか。

 アルダーソン氏は今回の動きについて、「リリーフ投手陣にとってカルロス(トーレス)が非常に重要だということだ」と述べ、「彼をリリーフ陣から外して先発に組み込むことになれば、チームは弱体化する」と説明した。

 松坂が来てもメッツにとって補強にならず、人気倒れだと言っているわけではない。07年のシーズン前に日本から来たときには、大騒ぎだったが。レッドソックスは交渉権獲得のための5100万ドルに加え、5200万ドルを払って契約を結んだ。

 松坂は熱狂に応えられなかった。08年には18勝(3敗)をあげたが、レッドソックス時代の通算防御率は4.52だった。09-12年は、故障もあって先発は55回にとどまった。

 つまり、メッツは松坂をそれほどあてにしていないのかもしれない。だが、彼の今後は投球内容にかかっている。3A時代の最後8回の登板では防御率を2.85に抑え、チームに貢献できる何かを持っているかもしれないとメッツに思わせた。

 だが、23日の試合の1、2回は、それを証明できなかった。

 テリー・コリンズ監督は松坂について、「4、5年前と同じでないことは確かだが、彼は投げ方を知っている」と述べ、「自分の持てるものをどう使うかわきまえている」と付け加えた。