福知山爆発「虫みたいに焼かれた」…重傷の男性

20130905-00000045-mai-000-2-view京都府福知山市の花火大会での爆発事故で、重傷のやけどを負った男性2人が入院先で毎日新聞の取材に応じた。事故から3週間になるがやけどの痛みは消えず、一緒に被害に遭った家族らの容体や今後の生活への不安に心労は尽きない。

京都府北部在住の男性(61)は、小6と小2の男児を含む親戚4人と出かけ、火元のベビーカステラ屋台のすぐ隣に立って開始を待っていた。突然、背後に光と衝撃を感じて振り向くと「炎が走ってきた」。男性は必死で川の方へ逃げ、気がつくと、手足が焼けただれていた。親戚4人もやけどを負い、病院に搬送された。その後の記憶がなくなっているが、小6男児が「痛い痛い」と声を上げていたのを覚えている。

 男性は数日間、高熱に浮かされた。包帯を替えると「皮膚がひっついて飛び上がるほど痛かった」。今は一般病棟に移ったが、痛みが残り、歩けない。

 農機具販売を営む男性の収入はゼロになり、焦りが募る。謝罪に訪れた花火大会実行委幹部は「(補償は)前向きに考えています」と言うだけ。「明日の生活がかかっている現実を分かっているのか」と語気を強めた。

 左手指の皮膚はやけどで黒ずみ、一部がめくれてピンク色の新しい皮膚が見える。男性は窓の外を見ながら言った。「このありさまを多くの人に知ってほしい。草むらの虫みたいに焼かれた。誰に責任があるかなんて関係ない。被害に遭った人にできる限りのことをしてほしい」

京都市の男性(47)は里帰りした際、母(85)と中3の長女(14)の3人で花火大会に出向いた。受験勉強に追われる長女の息抜きになればと思った。

 ベビーカステラ屋台の斜め横の河川敷に立っていた時、ガソリン携行缶を持った男性の姿が目に入った。「何だろう」と思った直後、巨大な火の塊が広がった。みんなでとっさに逃げたが、両手両足に強烈な痛みが走った。「そのまま川に飛び込みたいぐらいだった」と振り返る。

 短パンにTシャツ姿だった長女は両手両足に重傷を負った。男性は近くの屋台でお茶のペットボトルをもらい、長女と母にかけた。母を背負って娘の手を引き、堤防を駆け上がった。出会った救急車に「娘だけでも」と頼んだが、全身熱傷の人が優先され、パトカーで搬送された。

 長女は痛みで叫び続けた。眠ることもできず、投与されるとすぐに意識を失うほど強い鎮痛剤が使われた。9月になって40度前後の熱は下がり、皮膚手術も受けたが、長女からは前向きな言葉は聞かれない。「事故は腹立たしいが、今はそれより娘が心配。元気に学校に行けるようになってほしい」。自身は一般病棟に移ったが、同じ病院の救急病棟にいる長女に昼夜問わず付き添う日々が続く。