再生可能エネルギーの買い取りを電力会社がストップ

●太陽光が圧倒

2014年9月から10月にかけて、再生可能エネルギーの買い取りを電力会社がストップする事態が生じています。

再生可能エネルギーとは、石炭や石油、天然ガスのように燃やしてしまったらおしまいの化石燃料による発電が、資源の枯渇不安や地球温暖化の要因とみなされる温室効果ガスを排出するのに対して、その不安がないか非常に小さいもの。太陽光はもちろん風力、地熱、小水力、バイオマスなどがあります。なかでもパネルが値下がりし、騒音などの問題もない太陽光が今のところ圧倒しています。

電力会社の買い取りは2011年に成立した再生可能エネルギー固定価格買い取り法に基づき、12年7月から義務づけられました。太陽光ならば1キロワット時当たり42円を20年と「固定」して買い取ります。主な担い手は新電力(特定規模電力事業者)です。全国に10社ある大手電力会社(首都圏ならば東京電力)以外の発電事業者で2000年、工場やビルなど大口需要者(電気をたくさん使う会社など)向けに電気が提供できるようになった際に誕生しました。今は大手が地域ごとに独占している家庭向けも16年をメドに新電力にも開放されます。これを「電力小売りの全面自由化」といいます。

●当面は「広域系運用機関の設立」

こうした電力システム改革は2013年に成立した改正電気事業法に基づき段階的に行っていく予定です。3段階に分かれていて「電力小売りの全面自由化」は第二段階。今は2015年をメドとした「広域系運用機関の設立」をめざしている最中です。なお最終段階は18年から20年をメドとした「発送電分離」となります。

広域系運用機関は、電気が余っている地域から足りない地域へ電力を提供するための組織です。日本は東側の周波数が50ヘルツで西側が60ヘルツと異なっています。この違いが問題視されたのが東日本大震災で急激な電力不足に見舞われた東北や関東(50ヘルツ)へ西日本から融通できず停電に追い込まれました。そこを何とかしようという試みです。

電気はそのままでは貯められません。今使っている電気はたった今発電されたものです。したがって融通できないと大震災の時のような事態が起こりかねません。

現在、大手電力会社は発電のほとんどに加えて送電・配電の部門をほぼ独占しています。これまでは自ら発電する量をもとに送電網を構築していけばよかったのが、新電力からの再生可能エネルギーが送られてくるようになり、受け入れる容量を超える危険性が出てきました。そうなると機器が壊れたり、大規模な停電になったりすることが予測できます。したがって新電力からの新規申し込みや未契約分をストップしてしのごうという結論に至ったのです。

ここでわかるのは、既存の送電網がパンクしかねないほど再生可能エネルギーを用いた発電が増えているという現象です。商売最大のリスクの1つが売れ残り。しかし固定価格買い取り法はその心配がありません。ゆえに鉄鋼業や商社などがこぞって開発に乗り出したのです。政府は30年までに再生可能エネルギーによる発電量を2割以上に引き上げようとしています。その意味ではよい兆候だといえましょう。

と同時に今回のストップは改めて大手電力が各社の判断だけで送電部門を担う限界をも指し示しました。電力システム改革のプログラムにしたがえば、第一段階の「広域系運用機関」でどれだけ解消できるのかが焦点です。自社の感覚では余ってしまう送電網も足りない他社への融通を考えると増強した方がいいとか、電力会社間の送電網を太くするといった対応が求められそうです。まさしく「広域系運用機関」が考えるべきテーマでしょう。そこで大手電力に加えて国(経済産業省など)や新電力も意見を言い合い、目的とする全国一元化へ向けて動いていかなくてはなりません。

●太陽光や風力は天候や時間帯に影響される

最終段階である「発送電分離」の姿もそのさなかに具体化していきそうです。この着想は、今は大手電力が独占状態にある送電網を、新電力が託送費を払って客に届けているのをやめて、送電部門を切り離して中立とし、大手も新電力も同一条件で使えるようにしようという計画です。競争原理を働かせて価格などより客に魅力ある電力会社を増やしていこうともくろんでいます。新電力のますますの参入が期待される一方で、どれくらいの発電量があって、適切な送電網とは何かというところまで見通せていません。太陽光や風力は天候や時間帯などに左右されやすく、それが今回のストップの大きな要因ともなりました。送電部門が独立して中立の立ち位置となり、その前には家庭向けも開放されている予定なので、失敗すると大企業から家庭までの全範囲で大きな影響が出るでしょう。