米国で絶好調の「タコベル」は本当に再上陸するのか

米国最大のメキシコ料理ファストフード店「Taco Bell(タコベル)」が、再び日本に上陸する可能性が浮上している。
 実現すれば、海外でタコベルを食べたことのあるようなファンにはたまらないニュースだろう。だがいったいどこからそんな話が出ているのか。

タコベルの親会社であるYum! Brands(ヤム・ブランズ)社は、KFC、ピザハットとタコベルなどのブランドを傘下にもつ巨大企業だ。2013年度の売り上げは、グループ全体で約130億ドル(約1兆5290億円)にもなるのだが、2022年までにその売り上げを140億ドル(約1兆6468億円)にするという目標を掲げている。そしてその起爆剤として、米国内だけでなく海外でも出店を加速させようとしているのだ。

 確かに、大企業がアグレッシブに事業の成長戦略を立てる場合、ブランドの海外展開は非常に重要になる。同グループであるKFCとピザハットに関しては、すでに海外で順調な成長を続けている。しかし、タコベルは米国内でのビジネスが中心となっており、海外への進出が遅れているのだ。KFCは海外115カ国に1万8000店舗、ピザハットは海外120カ国以上で1万4000店舗を展開しているのに対して、タコベルは海外26カ国で250店舗しか出店しておらず、比較にならないほど少ない。

 そこでタコベルは、2023年までに海外で1300店舗の出店を目指すと発表。そして同社によると、彼らがいま注視している国が、英国、ポーランド、韓国、タイ、チリ、ペルー、インド、そして日本だ。

●日本への進出はまだ先!?

 実のところタコベルは、1980年代に一度日本に上陸している。だがあっという間に撤退してしまった。そして、長い沈黙を経て、このタイミングでタコベルが再上陸――ということになるかもしれないのだ。ただ、タコベルは本当に再上陸するのだろうか? 

 結論から言うと、残念ながら今のところ、タコベルは海外での出店目標とエリアを絞ってはいるが、日本への進出はまだ先になるかもしれない。というのも、専門家らの見方では、同社が重要視している国の中でも、まずはすでに店舗がある国から攻めるほうが、企業の戦略としてはリスクが低く確実だからだ。とすると、すでに店舗のある英国(4店舗)、韓国(4店舗)、チリ(14店舗)とインド(7店舗)での出店を優先することになるだろう。

 これまでの例を見れば、タコベルは海外出店に対してかなり慎重に進めている。インドを例にとると、2010年にインドのバンガロールに1号店をオープンさせ、当初の目標では2015年までに100店舗を出店する計画だった。しかし、その計画を2016年までに25店舗の出店目標とトーンダウンさせている。その背景には、日本だけでなく英国や韓国、ポーランドなどで過去に一度は撤退したというトラウマがあるのかもしれない。そう考えば、今回の海外進出宣言もトーンダウンする可能性も否めない。

 そんなタコベルだが、実は今回の海外展開はこれまでとは違うという見方もある。というのも、米国内でのビジネスが絶好調で、それが海外展開を加速する後ろ盾になるとも言われているのだ。タコベルは米国内においてヤム・ブランズ社全体の営業利益の3分の2を稼ぎ出している。しかも、店舗当たりの年間売上高が平均130万ドル(約1億5292万円)と全ブランドの中で一番高く、運営コストも効率がいいため粗利が20%ほどある。

 さらに、近年はヒット商品も生んでいる。2012年にフリトレー社と共同開発した、ドリトスのナチョ・チーズ味をタコスのシェルに使用した新商品「ドリトス・ロコス・タコス」は、爆発的ヒットとなった。なんと、発売開始からわずか10週間で1億個を売り上げ、タコベル史上最大のヒット商品になった。さらに、同年だけでも10億ドル以上(約1184億円)を売り上げたというから恐ろしい。

●タコベルにとって最大のチャンス

 2014年10月末には、スマホからオーダーができるアプリもスタートさせた。アプリを使ってオーダーすると、通常メニューをカスタマイズできるのに加え、期間限定で人気商品のドリトス・ロコス・タコスが無料で1個ついてくるというプロモーションも成果を上げている。すでに、200万ダウンロードされるヒットになっている。モバイルでのプロモーションをうまく活用しているのは、海外でもかなり強みになる。

 米国で好調なタコベルが、国内での成功の波に乗って、海外に押し寄せる――。強固なグローバルブランドとして海外での認知度が上がれば、2022年までに達成させる予定のビジネス目標を早めることも可能かもしれない。

 2020年には東京でオリンピックが行われる。それまでに日本へ再上陸を実現させることは、タコベルにとって最大のチャンスではないだろうか。