住宅ローン 金利やサービス競争過熱…大手も「来店不要」

銀行の住宅ローンを巡り、金利やサービスの競争が過熱している。低金利を売りにインターネット専用銀行などがシェアを伸ばす中、来店での契約が中心だった大手銀も対応を迫られている。ただ、過当競争で銀行の収益力が低下する懸念もあり、金融庁は警戒感を強めている。

みずほ銀行は、審査や契約の手続きをインターネットや書類郵送で済ませ、来店せずに優遇金利で新規の借り入れができる住宅ローンの検討を始めた。

 大手銀が扱う通常の住宅ローンは、顧客の信用力を見極めるとともに、きめ細かく相談に応じるため、申し込みや審査、契約などのために店舗を数回訪れる必要がある。三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行も来店なしで借り入れできる商品をそろえるが、金利は来店した場合と同じだ。みずほ銀は、来店不要なら人件費などを抑えられるため、来店した場合よりも低い金利を適用し、顧客開拓につなげる方針だ。他行からの借り換えについては今月、来店不要で金利を低くするプランを始めたが、さらにサービスを拡充する。

 みずほ銀がローンの「ハードル」を下げるのは、低金利のネット銀に対抗するためだ。ネット銀は店舗を持たず低コストで運営できるため、金利を抑えられる。住宅ローン金利は歴史的な低水準にあり、変動型金利の場合、大手銀の年0.775%に対し、ネット銀は0.5%台のケースもある。ネット銀で最も住宅ローンに強い住信SBIネット銀行は、2014年10月に住宅ローン残高が2兆円を突破、2年半で倍増した。最大手の三菱東京UFJ銀の残高は約16兆円に上るが、近年は横ばいだ。

 みずほ銀幹部は「ネット銀行がシェアを伸ばす中で、我々はジリ貧状態。ネット銀行と同じ土俵に立ち、シェアを切り崩したい」と話す。大手行では、りそな銀行も3月末まで、ネット経由で他行から借り換えると金利を優遇している。

 このほか、三菱東京UFJ銀は、契約者の女性が妊娠・出産すれば、金利を1年間、0.2%引き下げている。三井住友信託銀行は家電製品や引っ越しに使えるクーポンを発行、イオン銀行はグループ各店での買い物が5%割引になるなど、生活支援型の特典も登場。あの手この手でアピールする。

 これだけ金利が低いと、住宅ローンではほとんどもうけが出ない。それでも各行は、住宅ローンを顧客開拓の材料と割り切り、住宅リフォームや教育資金の融資、投資信託や保険販売につなげて収益を高める戦略を描く。

 ◇「過当競争の可能性」金融庁が警戒

 金融庁は住宅ローン競争の激化で、銀行の収益が悪化しないか警戒感を強めている。今年に入って、住宅ローン業務に関する実態調査を開始。金利が過去最低水準に低下する中、採算を度外視した貸し出し競争に陥らないよう、各行にリスク管理の徹底を促したい考えだ。

 実態調査は、三菱東京UFJ銀行など主要行のほか、融資業務の中で住宅ローンへの依存度や融資残高が多い一部地方銀行が対象。残高や平均金利だけでなく、借り手の年収に占める返済額の割合▽金利変動時の対応策▽2030年度までの住宅ローン業務の収益見通し−−などの回答を求めている。

 国内の銀行全体の住宅ローン残高は14年9月時点で約120兆円。融資全体の4分の1程度を占める。信用力の低い人でも相当の金利をつけずに貸し出すようなケースが重なれば、不良債権に転じるリスクも高まる。そうなれば、銀行の経営が揺らぎ、金融危機の再発につながりかねない。

 金融庁は「目先の顧客を増やすため、銀行が収益を度外視した低金利競争に陥っている可能性がある。過当競争に陥らないよう、調査し、分析していきたい」(幹部)と説明。銀行の回答をもとに、住宅ローンのリスクを適切に管理しているかなどを分析、年内にも調査結果を公表することを検討している。また、無理な金利設定で収益の悪化などが見込まれる銀行があれば、個別の指導などを通じて改善を求める方針だ。