初任給額より賃金体系、就活生は必ず会社に尋ねておくべき

3月に入り、「公式的」な就職活動もついに始まった。会社にとっては採用活動だ。その過程では、自社のことを、自分のことを知ってもらうために、同時に会社のことを、応募者のことを知るために様々な情報がやりとりされることになる。

そんな情報の1つに、会社が提示する初任給額もある。就活をする学生のほとんど全ては、入社後の生活を給与に頼ることになるから、「働いていくらもらえるか」は確かに重要ではある。また、他社よりも高い初任給額は、この先の高い給与を期待させるかもしれない。しかし、「初任給がちょっとでも多い会社の方がいい?」かと言うと必ずしもそうでないことは、既に言われているとおりだ(リクナビ2015「500人に聞いた!若手社会人の“給与明細”大公開!!」)。

そこで、初任給額よりも、何に対して支払われるものによってその給与が構成されているかを教えてくれる賃金体系を重視することを勧めたい。賃金体系は簡単には示しにくいので求人情報にはなかなか掲載されていないが、こちらの方が格段に意味のある情報だからだ。

わかりやすくするために誇張した仮の数字を入れたものだが、次の式を見て考えてみよう。

A社

初任給額(所定内給与) 20万円

= 年功給12万円(60%)+職能給6万円(30%)+成果給2万円(10%)

B社

初任給額(所定内給与) 20万円

= 年功給4万円(20%)+職能給4万円(20%)+成果給12万円(60%)

これを見れば、A社とB社の20万円は、額は同じでも異なる20万円だと感じないだろうか。A社とB社では、従業員に求める姿勢や会社が重視するものが異なっているのであり、賃金体系にそれが示されている。A社の賃金体系からは、経験を重んじ、給与差はあまりつけずに組織の一体感を重視していこうとする姿勢が読み取れる。一方、B社の場合、従業員間の競争を是として、年齢や勤続年数にかかわらず、結果を出したものには金銭的に報いようという考えが示されている。

どちらが良い悪いという問題ではない。会社の管理思想の違いであり、制度にはそれが反映されているという話だ。だから、嘘をつけない制度を確かめておく必要がある。競争を好まない人がB社に入っては本人も会社も不幸だし、いまさら年功制なんて、という人がA社に入っても同様だ。自分の望む働き方と会社が求める姿勢とが合っているかを確かめるためにも、働きたい会社の賃金体系を知っておくことは不可欠だろう。

就活生は、どこかの段階で賃金体系について必ず尋ねておくべきだ。「お金のことばかり気にしていると思われないか」という戸惑いはあるかもしれないが、絶対に聞くべきだ。尋ねているのはお金に関わることだが、従業員に対する会社の考え方をこそ確かめようとしているのだから。もしそれに答えてくれないようなら、そんな会社は志望先から外した方がいい。第一に、上で述べたように、自分が求める働き方が会社の求める働き方と合わない危険性が高まるからだ。第二に、「お客さん」の段階でのそんな質問にも答えてくれないような会社は、その一員となった暁にはどんな態度に出るかは推して知るべしだからだ。