バブル崩壊25年 アベノミクスに迫る危機 教訓忘れた日本人

当時の異常さを指摘した野口悠紀雄さん警告

 アベノミクスと日銀の異次元緩和で円安・株高が続く。だが、日本経済はそれほど強くなったのだろうか。1980年代後半から株価と地価が急騰した「バブル景気」(86年12月〜91年2月)には日本中が熱狂したが、バブルは90年代初頭に崩壊し、その後の日本に深い傷痕を残した。バブル当時、その異常さを指摘していた野口悠紀雄・早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問は今の株高は「円安バブル」だと断じ、「日本人はなぜ、バブルから学べないのか」と問いかけている。

ちょうど25年前の90年3月27日。大蔵省(現財務省)は地価高騰を抑えるため、銀行などに「不動産融資の総量規制」を通達。振り返れば、この通達が「地価は上昇し続ける」という市場の期待を壊し、地価バブル崩壊のきっかけとなった。

 バブルは膨らむ時よりも、崩壊する時の方が急激だった。89年末に3万8915円の史上最高値をつけた日経平均株価は、翌90年の年初から一気に下落。しばらくして地価も下落に転じた。国民も当初は「バブル退治」を歓迎したが、バブルがはじけた影響の大きさは想定を超えていた。土地を担保に事業会社に貸し付けていた金融機関は大量の不良債権を抱え込み、97年から98年にかけては北海道拓殖銀行、山一証券、日本長期信用銀行などが次々と経営破綻した。

 野口さんは「虚業で多額のお金を稼げる一方で、真面目に働いても自分の住む家も買えない。本当におかしいことなのに、みんなそれに熱狂している。(なぜ、だれも異常さに気がつかなかったのかは)いまだにわからない」と振り返る。

 日本企業はグーグルやアップルのような世界の手本になる革新的な技術開発や経営モデルを生み出していない。国民に80年代バブル期のような高揚感もない。それでも日経平均株価は2万円をうかがい、東証1部の時価総額はバブル絶頂期に近づいている。野口さんは「日本企業の利益はリーマン・ショック前の水準には届いていない。日銀が国債市場に無理を強いることで過激な円安が起こり、それが今の日本企業の収益を支えている」と注意を促す。「日本の企業が今は世界に冠たるものと誰も思っていないのに、株価は上がっている。だから、(80年代後半からのバブル以上に)もっと変な状態だと思います」