食品、外食 5月以降も値上げラッシュ 個人消費、腰折れ懸念も

20150510-00000005-biz_fsi-000-2-viewハンバーガーや小麦粉など暮らしに身近な商品の値上げが5月以降も相次ぐ。外食や食品各社は、円安と原材料の値上がりが進む中、コスト削減だけでは負担を吸収し切れないとして、消費者への価格転嫁に踏み切る。野菜や果物など生鮮食品の高止まりに加え、外食や加工品などの値上がりが続けば家計負担が増大。実質賃金の改善が追いつかなければ、回復途上にある個人消費に冷や水を浴びせかねない。

モスフードサービスは、ハンバーガー店「モスバーガー」の商品を19日から値上げする。全商品の約9割に当たる102品目が対象で、上げ幅は10〜70円。値上げは2013年10月以来となる。原材料の牛肉価格が値上がりしていることなどが主因。主力商品の「モスバーガー」は30円値上げして370円に、セット商品は40〜70円高くする。

6月以降は、家庭向けの飲料や食料品の価格も相次いで値上がりする。ヤクルト本社は発酵乳飲料「ジョア」を6月1日から1本当たり10円上げて100円にする。原材料価格の高騰が主因といい、値上げは1992年以来23年ぶりとなる。

日清フーズと日本製粉、昭和産業の3社は、家庭用の小麦粉やパスタの出荷価格を7月から値上げする。原料となる輸入小麦の政府からの売り渡し価格が4月から引き上げられたのを受けた措置。家庭用小麦粉の上げ幅は日清フーズと日本製粉が約1〜3%、昭和産業が約1〜4%となる。

永谷園も7月から茶漬けやふりかけなど60品目の価格について約5〜10%の値上げに踏み切る。幅広い品目の値上げは25年ぶりだ。

「商品の品質を下げないために値上げはやむを得ない」。こう話すのはファーストリテイリングの柳井正会長兼社長。同社は運営するカジュアル衣料品店「ユニクロ」で、今夏から順次発売する秋冬向け商品の2割を値上げする。ウールやカシミヤなどの原材料価格が上がり、円安で海外で製造した商品の輸入費用が膨らんだためといい、店頭価格は平均10%程度上がる。

急速な円安を背景に、日用品など身近な商品の価格は今年2〜4月にかけて順次、値上げされてきた。さらに、5月以降も歯止めのかからない値上げで、家計の負担は増えるばかりだ。

ただ、値上げの動きの一方で今年は大企業を中心に昨年を上回る賃上げが実施されている。このため第一生命経済研究所の永浜利広主席エコノミストは「物価上昇の影響を、それを上回る賃上げでカバーできるかが重要」とみる。今後、賃金改善が遅れている中小企業をはじめ、賃上げの裾野がどこまで広がるかが、値上げの影響を吸収し、個人消費が力強く回復できるかの鍵となりそうだ。