都構想「否決」 “看板”失い維新動揺…橋下待望論、舞台作る

一枚看板の「政界引退」に大阪維新の会が揺れている。「大阪都構想」の賛否を問う17日の住民投票で反対多数となり、維新代表の橋下徹大阪市長は任期満了となる12月での政界引退に向け、後任の代表の選出と引き継ぎを進めていく意向を表明した。維新内では橋下氏の決意を受け入れる声があがる一方、幹部の一人は早くも「(再登板の)舞台を整える」と息巻く。維新の原点である都構想実現への道がなくなり、「存在意義が見いだせなくなった」との喪失感も出始めた。党旗揚げから5年余り、存続への試練を迎えようとしている。

 「人材がいますから大丈夫です」。政界引退を正式に表明した17日の記者会見。橋下氏は、維新弱体化を指摘する記者の質問に即答した。

 さらに、自身が先頭に立って記者対応などを行ってきたことについて言及し、「若手のメンバーが(表舞台に)出る機会が少なかったが、メンバーはきわめて優秀。僕がいなくなった方が活躍の場が増える」と持ち上げてみせた。

 だが、橋下氏の引退を積極的に受け入れる声は少ない。

 「完全に政界引退することは絶対にさせへん」。維新副代表の馬場伸幸衆院議員は、会見場で引退を明言する橋下氏の姿を見届けた後、強い口調で“引き留め宣言”をした。

 自民党所属の堺市議だった馬場氏は、橋下氏の理念に共鳴して維新入り。橋下氏の側近の一人とされる。

橋下氏について「政界を去って日本に何のプラスもない。日本を背負うリーダーをなくしたらあかん」と強調し、「必ず『橋下待望論』は出てくる。そのときに(活躍の)舞台をわれわれで作っていく」と悲壮感を漂わせた。

 維新創生期からのメンバーで総務会長の東徹参院議員は、反対多数の結果について「住民の皆さんが民主主義で決めたことだから、受け止めなくてはいけないと思うが、残念は残念だ」とあきらめきれない様子。橋下氏の引退は「大阪にとって大きな損失じゃないか」と目を赤くして話した。

 伊東信久衆院議員は「橋下氏個人にほれて維新に入った。これからもついていきたい。それだけだ」と引退表明を惜しみながら、「橋下代表が決めたことだから、気持ちを受け止めたい。自分は国政を頑張らなければいけない」と前を向いた。

 一方、本拠地・大阪の地方議員らの受け止め方はより深刻だ。

 大阪市議団の美延映夫幹事長は、5割近い得票に「これだけの市民の声がある。大阪の改革を進めていきたい」と語ったが、橋下氏の引退表明については「今のところ、コメントは控えたい」と言葉少なだった。

 自民から移籍したある議員は「橋下徹という政治家と看板政策の都構想を同時に失うのは、維新にとってあまりにも大きい」とショックを隠しきれない様子。「自分が維新の一員である意義が見いだせなくなる」ともらした。