人気爆騰!ライザップの秘密 “結果にコミット”の裏に驚異の高収益モデル

20150525-00071944-diamond-000-1-view『週刊ダイヤモンド』2015年5月30日号の第1特集「究極のダイエット」の中から、一部を抜粋してお届け。“結果にコミットする”で人気爆騰中の「ライザップ」の、驚異の高収益ビジネスモデルに迫ります。

 経常利益は2.4倍増で、3期連続の過去最高益。昨年度の株価上昇率は440%を超え、上場企業中2番目の伸び率を記録した。

 大人気の高級プライベートジム「ライザップ」を全国展開する健康コーポレーションが、まさにわが世の春を謳歌している。札幌の新興市場から一気に東証1部へとくら替えする準備も進めており、時価総額は1000億円に迫る勢いだ。

 その原動力がライザップであることは疑う余地がない。では何がここまでこのジムを押し上げたのか。成功の秘訣は、芸能人が劇的な肉体改造を遂げると話題のCMのみならず、そのビジネスモデルの巧妙さに隠されている。

 既存の大手ジムは「場所貸しをするだけで、痩せるというゴールに到達できなかった」と健康コーポレーションの瀬戸健社長は語る。

 換言すれば、「痩せない程度に運動してもらい、細く長くお金を落としてくれるのが上顧客だった」(フィットネスジム関係者)。

 これに対し、ライザップの経営戦略は百八十度異なる。明確な目標数値を設定し、短期間で確実に痩せさせる。CMで流れた「結果にコミットする」というコンセプトが、高額でもすぐに減量したいという層から支持を集めたのだ。

 こうした“結果至上主義”と表裏を成すのが、業界の常識を覆すコスト構造で、これこそが同社のCM戦略の屋台骨を支えていた。

 ライザップは実のところ、高コスト体質の大手フィットネスジムとは対照的に、驚異的な低コスト経営を実現している。

 フィスコ客員アナリストの浅川裕之氏が解説する。

「完全予約制のライザップは、大手ジムのように駅前一等地で集客しなくてもいいため、立地にこだわる必要がなく、家賃の大幅引き下げに成功した」。実際、原宿のライザップ神宮前店は、最寄り駅から徒歩で10分以上離れ、大通りから一本入った目立たない雑居ビルの地下に入居している。

 同社資料によれば、一般的なフィットネスジムの場合、地代家賃は売上高の20%に達するが、ライザップは4%にすぎないという。

 しかも、「マンツーマンの筋トレが基本のライザップのジムにはプールも最新式の設備も要らないため、安上がり」と浅川氏。確かに、ライザップのトレーニング室に設置されているのは、ベンチプレスやバランスボールのような基本的な器具ばかりだ。それ故、売上高対比の水道光熱費の割合が、一般的なスポーツクラブの場合は10%を占めるのに対して、ライザップはわずかに1%。設備維持費も一般的なスポーツクラブが5〜8%のところ、ライザップは1%と、大幅に抑制できるのだ。

 このように原価を抑えることで、高い粗利益率を実現。これを原資とした巨額の資金が宣伝広告活動へと大量投入され、あのCMがお茶の間に届くというわけだ。その結果、知名度と会員数はさらにうなぎ上り。それがさらなる業績の向上につながる好循環を生んでいる。

● 競合ジム台頭の対抗策でカギを握る 会員3万人のビッグデータ活用

 ただ、この流れがいつまでも続くとは限らない。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングのチーフコンサルタント、高橋千枝子氏は、「ダイエット市場はブームの移り変わりが激しい。しかも国内は人口が減少し、市場自体も細分化しており、いずれライザップも伸び悩む」と警告する。さらにその上で、「それまでに、次の収益源を育てる下準備をする必要がある」とも指摘する。

 その意味で注目されるのが、ライザップの会員の世代別割合だ。他のジムは60歳以上会員数が20%台後半〜30%台後半に達しているのに対して、ライザップのそれはまだ3.4%にすぎず、まだまだ開拓余地が残っているのだ。

 布石も打っている。医療分野への進出だ。健康コーポレーションは、人間ドック機能のある大学病院などから提携の提案を複数受けているとされ、年内にも複数の医療機関と提携していく方針で、シニア層の取り込みに本腰を入れる。

 逆に、今後のボトルネックとして挙げられるのが、参入障壁の低さによる競合ジムの台頭だろう。

一般的なフィットネスジムをオープンするには数億円規模の初期投資が必要となるが、プライベートジムなら40〜50平方メートルのマンションの一室さえあれば十分。初期投資も数百万円とハードルが低い。

 すでに、ライザップと同じ仕組みで、複数のプライベートジムが急拡大している。

 「競合店に対する危機感は持っている」と瀬戸社長。対抗するには、質の高いトレーナーを確保、教育して、高級ジムとしてのブランドを確たるものにすることが急務だ。

 そこで鍵を握るのが、同社が保有する会員3万人の個人データだ。実は「入会して1ヵ月以上たつ会員なら、情報を入力すればどんな経緯で最終的に何キログラム痩せるか、90%以上の確率で予想できる」(瀬戸社長)。

 これらをビッグデータとして徹底分析し、独自のトレーナー育成プログラムを構築できれば、ライザップは業界全体の雄に躍り出るだろう。