「丸亀製麺」運営するトリドールの野望…アフリカで焼き鳥チェーンがバカ受け

讃岐うどん店チェーン「丸亀製麺」を運営するトリドールが、国内外食トップの称号獲得に向け強い野心を抱き始めた。同社が描く青写真では、平成37年3月期に売上高で5000億円を達成し、国内外食トップのゼンショーホールディングス(HD)に肉薄し、将来は抜き去りたい考えだ。積極的な買収や、国内外での出店攻勢で年率20〜30%の成長を目指すという創業者の粟田貴也社長の“イケイケ”路線に、現実がどこまで追いつくかがカギとなる。

■10年後に5000億円の“大風呂敷”

 「大風呂敷を広げて迷惑をかけてはいけない」−。 今年5月の決算説明会。トリドールは27年3月期に872億円だった連結売上高を10年後に5000億円へ引き上げる計画をぶち上げた。現在に比べ規模を約6倍に増やさなければならないため、記者からは疑問視する声も出たが、粟田社長は、自信満々にこう言い切った。その上で、目標達成には「年率2〜3割の増収が必要になる」と述べた。  しかし、トリドールの27年3月期の増収率は前年同期比11.4%にとどまっている。そこで同社が2〜3割増収路線の確立に向け当面の戦略の要に据えるのが「2桁成長がごろごろしている」(粟田社長)という海外外食市場の開拓だ。

 とくに、同社の海外戦略で特徴的なのはマクドナルドやケンタッキー・フライド・チキンなど米国の外食大手チェーンですら未進出の国・地域を狙うことだ。

 今年3月にはアフリカのケニアで焼き鳥風ファストフードを提供する店舗を初出店。同社によれば、照り焼きチキンの添え物として提供していた「焼きうどん」がなぜか現地でバカ受けして、連日、客足が絶えないといい、2017年までに20店を出店するという。

 トリドールが、こうした“未開拓”の地を開拓する狙いは明確だ。外食の黎明期に、あえて市場に進出することで「先行者利益を得るため」(粟田社長)だ。

■日本食のない“未開拓地域”が的

 創業業態の「焼き鳥」や経営の柱に育った「讃岐うどん」を食文化として知らない国・地域への展開も積極化している。5月にはマレーシアで「丸亀製麺」を2店開店し、20年末までに合計10店舗を出店。インドネシアでも、焼き鳥業態「とりどーる」としては初となる海外店舗を5月27日に開き、20年末までに同国内で10店舗を展開する計画だ。両国とも急速な人口増加を背景に外食市場も伸びており、日本の消費者に鍛えられた味を水平展開。国民の胃袋を“日本の味”でがっちりつかんで、売り上げ拡大につなげる狙いだ。

 地域的な広がりに加え、買収も積極的に活用する。4月にはM&A(企業の合併・買収)や資本提携を目的とする全額出資の投資会社を設立。「うどん以外の事業を国内で拡大する」(粟田社長)目的といい、今後3年で外食企業の出資などに10億円を投じる。

 買収もフル利用しながら新業態開発の時間を短縮することで、国内外の店舗数を今期末の950店から向こう数年で段階的に1700店、3300店と「ホップ、ステップ、ジャンプ」で増やす考えだという。

■遠いゼンショーの背中

 ただ、牛丼チェーン「すき家」などを展開する外食国内トップのゼンショーHDのグループの店舗数は、今年5月末で約4750店、27年3月期の連結売上高は5118億円と、まだまだ背中は遠い。果たしてトリドールが描く5000億円の達成は大言壮語なのか、それとも必達目標なのか…。「夢は大きく、現実には実直に取り組む」と話す粟田社長。10年後に描く夢を現実の毎期決算での売り上げ増という結果で示せるか。ライバルのみならず、株式市場からも熱い視線が注がれている。