「熱い」「助けて」逃げる乗客 新幹線火災、その時

何者かが液体をまいて火を放ったのは、高速走行する東海道新幹線「のぞみ225号」の車内でだった。非常ボタンが押され、車両は緊急停車。停電で空調が止まった車内に白煙が充満した。大勢のビジネス客や旅行客は逃げ場のない「密室」での突然の出来事に不安な表情を見せた。

JR東海によると、車内の非常ボタンが押され、新幹線が止まったのは午前11時半ごろだった。

 「1号車で火災が発生しました」。15号車に乗っていた60代男性は新幹線が緊急停車した後、車内アナウンスを聞いた。1号車の客に3号車より後ろに避難するよう指示する内容だったという。

 その後、しばらくして車内は停電。空調が止まり、15号車のデッキは暑さで気分が悪くなる人でごった返した。「車外に出ないでほしい」との指示を何度か聞いたが、何が起きているか説明はなかった。「ニュースがあればアナウンスしてほしい」と男性は憤った。

 10号車にいた男性(48)は新幹線が停止した後、先頭車両に移動。先頭車両の一番前方が最も激しく燃えていたという。男性によると、1号車に乗っていた乗客が「ガソリンが床にまかれ、火がついた。『熱い』『助けて』『子どもだけでも』という悲鳴が上がっていた」と、出火時の様子を話していたという。