民事調停申し立てた「JASRAC」 批判の声が上がるのはなぜ

音楽著作権の手続きをしないまま店舗でBGMの利用をしているとして、先月、一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)が171事業者、258施設に対して簡易裁判所に民事調停を申し立てたことが話題になりました。

 これまで個別に対応をしていましたが、JASRAC15支部が一斉に法的措置を取るのは初めてです。過去の著作権料の支払いとBGMの使用停止を求めています。対象業者は15都道府県の美容室や衣料品店、飲食店などで、著作権料を支払わずにCDや携帯音楽プレーヤー、パソコンなどで音楽を流しているとのことです。著作権手続きをするよう繰り返し求めましたが、応じなかったことから今回の法的措置に踏み切っています。しかし、正当な権利を主張しているのにも関わらず、世間の評判は必ずしもよくないようです。それはなぜでしょうか?

そもそもJASRACって何?

 JASRACは、日本国内の作詞者や作曲者、音楽出版者などの権利者から著作権の管理委託をする団体です。演奏や放送、ネット配信などさまざまな形で利用される音楽について、楽曲利用者にとっては簡単に手続きができる場となり、権利者側には煩雑な利用料の徴収を代行してくれる存在となります。

 例えば、毎日いろいろな音楽を流しているテレビ局ではどのような仕組みになっているのでしょうか? 実は、あれらの楽曲の使用料について、利用するごとに各権利者に支払っているわけではないです。「事業者の年間売り上げの何%かを使用料として支払う」という形での包括契約を結んでいて、JASRACは一括して楽曲の使用料を管理しています。その後、年4回に分けて権利者に分配されているのです。ライブハウスなどでの生演奏についても、基本的には包括契約で、施設の規模などに応じた金額が使用料となっています。

 著作権法では、音楽について作曲者などの著作権者に「演奏権」を認めています。公衆に向けて楽曲を演奏したりCDを流したりするには、著作者の許諾が必要となるのです。家庭内や個人的に楽曲を利用する場合は問題ないのですが、店舗でのBGM利用はこの対象となり、店舗で流すという営利目的の使用では、個人経営や大手チェーン店などの規模にかかわらず、著作権使用料を支払う必要があるのです。JASRACは、店舗面積に応じて、包括契約で年額6千〜5万円(税抜き)を徴収しています。

 昔はレコードやCDをBGMに使っても、喫茶店などの店舗は使用料支払いを免除されていました。しかし、1999年の著作権法改正で支払い免除の規定が撤廃され、JASRACでも2002年から徴収を始めました。

 このように正当な権利に基づいてきちんと対応しているJASRAC。作曲家や演奏者の権利を守ることは芸術振興のためにもとても大事なことです。それにもかかわらず、社会的にバッシングを受けることが多いように感じます。これにはいくつか原因があるようです。