砂なしアサリ、陸で養殖 福岡市がブランド化狙う

福岡市が今年度、身に砂を含まないアサリの養殖に取り組み始めた。干潟で育てずに陸上の水槽を使うため、アサリが砂をのみ込まない仕組みだ。全国ではアサリの生産量は大幅に減少しているが、養殖ではなかなか実用化に至っていない。福岡の取り組みの成否に全国の関係者が注目している。

直径15メートルほどの水槽の中に、アサリが入ったバケツが浮かぶ。アサリの大きさによって分類され、水槽には海水が絶えずくみ上げられている。福岡市の事業委託を受けて、市漁協が身に砂を含まないアサリの養殖に取り組む養殖場(同市東区志賀島)だ。

 アサリの養殖実験については市内ではすでに、市と市漁協唐泊支所(同市西区)が連携し、博多湾で行われている。稚貝を海の中につるして育てる方法だが、今回の「砂ゼロアサリ」がこれまでと大きく違うのは、陸上の水槽で育てるところだ。

 陸上養殖に向けて市は今年度、720万円の予算を計上した。砂のないアサリは当然、調理の際に砂抜きの必要がない。大幅に生産量が減るアサリの安定供給を狙いに、ブランド化したうえで全国に売り出したい考えだ。

 技術指導をするのは、熊本県上天草市でこれまでアサリの養殖に取り組んできた藤芳義裕さん(62)。藤芳さんは2012年ごろまでに、育成ケースに海水を引き込んで、陸上でアサリを育てる養殖技術を開発した。実用化には至っていないが、場所と方法を変えて今回、あらためて実用化を目指すことになった。

 藤芳さんによると、福岡での養殖の方法はこうだ。(1)稚貝を一定期間、無菌化した海水で育てる。プランクトンの培養施設も整えて稚貝のえさにする(2)稚貝が1センチ程度にまで育ったらバケツに入れて、水槽に浮かべる。海水を循環させて、プランクトンをえさにして育てる――。

 方法は、できるだけ単純化させているという。「そうでなければ、コストを抑えられない。実用化に成功した事例もないので、よそでやっている養殖方法も何一つ参考にしていない」。藤芳さんはこう話す。