G20 中国「5年は苦難の調整」 生産・在庫が過剰

楼継偉財政相が経済の先行きの見通しを示す

 【北京・井出晋平】世界連鎖株安の震源地となった中国の楼継偉財政相が、中国経済の先行きについて「今後5年間は構造転換の陣痛期になる。苦難の調整過程になるだろう」との見通しを示したことが6日明らかになった。トルコの首都アンカラで5日まで開かれた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での発言として、中国財政省が6日発表した。中国の閣僚が厳しい経済運営が続くとの認識を示すのは異例だ。

G20は中国を念頭に「必要に応じ新たなリスクに対処する」との共同声明を発表したが、具体的な対策には踏み込まなかった。週明け以降の金融市場も中国の経済指標などに敏感に反応する不安定な状態が当面続きそうだ。

 楼財政相は「構造転換の陣痛期」について「過剰生産や過剰在庫の解消には数年間が必要」と説明した。

 中国は2008年のリーマン・ショック後、4兆元(約80兆円)の大型景気対策を実施し、世界経済の回復をけん引した。だが、鉄鋼や石炭、セメントなどの主要産業の設備が過剰となり、生産活動が停滞。今年7月の工業生産は前年同月比6.0%増と前月の伸び(6.8%増)を下回った。7月の新車販売台数は7.1%減と4カ月連続で前年割れし、在庫が拡大している。

 また、不動産への巨額投資で相次いで建設された大型マンションなどが大量に売れ残り、ゴーストタウンが各地で出現している。

 習近平指導部は、中国経済を投資依存の高成長から消費主導の安定成長に構造転換させることを目指しており、楼財政相は「構造転換に伴う主要な改革は20年までに完成させる必要がある」と表明。だが、非効率な国有企業が温存されるなど投資依存からの脱却は難航が必至で、「消費主導への転換は苦難の調整過程になるだろう」と認めた。

 一方、楼財政相は今後4〜5年の国内総生産(GDP)の実質成長率について「改革推進で(今年の政府目標の)7%前後を維持する」とも述べた。消費関連のサービス業が発展していることを訴えたが、改革の具体策は示していない。

 また、中国人民銀行(中央銀行)は5日夜、周小川総裁がG20で中国の株価について「6月中旬まではバブルだった。それ以降、調整があった」と説明したと発表した。バブルがはじけたことを事実上認めたものだ。周総裁は「(中国の株価が急落した)8月下旬の調整は全世界に影響を与えた」としつつも、「危機を避けるため中国政府は(追加金融緩和など)一連の措置を行った」と述べた。

 今回のG20は中国経済に議論が集中し、各国が構造転換を求める展開となった。中国は楽観的な景気見通しを前面に出すことが多かったが、今回は厳しい現状を説明する異例の対応に追い込まれたとみられる。

 G20の声明は、中国経済の減速から世界経済の不透明感が強まっていることを踏まえ、「経済回復を維持するために断固たる行動を取る」と宣言した。

 ◇中国の経済成長

 改革・開放政策が始まった1979年以降、高成長が続き、国内総生産の成長率は物価変動を除いた実質で10%を超す年も多かった。2010年には名目GDPで日本を上回り、米国に次ぐ世界2位になった。だが、今年1〜3月期の実質成長率は前年同期比7.0%とリーマン・ショック直後の09年1〜3月期以来の低水準に悪化。4〜6月期の成長率も7.0%だが、「実態はもっと悪いのでは」との指摘もある。