ファミマとユニー、統合合意でも待つ障害

20151017-00088538-toyo-000-1-view「日本を代表する小売りグループを目指す」(ユニーグループ・ホールディングスの佐古則男社長)、「広く社会に受け入れられる新たな流通グループを作りたい」(ファミリーマートの中山勇社長)――。

 コンビニエンスストア業界3位のファミマと、同業界4位の「サークルKサンクス」や総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」を抱える流通大手のユニーグループは15日、来年9月の経営統合に向け、基本合意をしたと発表した。コンビニ店舗数は首位セブン-イレブン・ジャパンに並び、総合流通業ではイオン、セブン&アイ・ホールディングスに続く新たな第3極の誕生になる。

 来年9月に新たな持ち株会社を設立する(ファミマを存続会社として、ユニーグループを吸収合併)。ユニーグループの1株に対し、ファミマ株式を0.138株交付する。新たな持ち株会社とコンビニ事業会社は東京に、総合スーパーの事業会社は愛知県に、それぞれ本社を置く。両社の大株主である伊藤忠商事(ファミリーマートへは約36%、ユニーグループへは約3%)は、新会社の3割弱の出資比率を保ち、持ち分法適用会社にする方針だ。

 5年後には、国内での売上高が5兆円以上(今年度の両社合計見通しは3.8兆円)、営業利益が1000億円以上(同679億円)、ROEは12%以上(同ファミマ7.5%、同ユニーグループ0.5%)を目指す方針を示した。

■ 正念場は詳細を詰めるこれから

 ただ大枠での合意は果たしても、来年9月の統合に向けて詳細を詰めていくこれからが正念場だ。不振が続く総合スーパーの再建策や、「ファミマ」「サークルK」「サンクス」と3つあるコンビニのブランド統一の調整などで、そもそも8月に予定していた基本合意は1カ月半遅れたが、それぞれ具体的な発表は今回も見送られた。課題が大きいだけに、関係者の思惑は今後も入り乱れそうだ。

最大の課題は総合スーパーの不採算店閉鎖にある。佐古社長は約230店の2割以上に相当する「最大50店閉鎖」との一部報道については否定するが、「(閉鎖は)是々非々で考えていく。契約満了や継続的な赤字が続いている店舗もあり、これを機に集中と選択を進める」と話す。実際、「前期末では経常利益段階での赤字店舗が4割に達している」(ユニーグループ幹部)としており、水面下では数十店規模での閉鎖を予定しているようだ。

 佐古社長はこれまで総合スーパーの大量閉鎖について否定的だったが、統合交渉の過程でファミマと伊藤忠から抜本的な改革要請が強まっていったようだ。中山社長は「基本合意の延期は互いの理解のためだった」としたうえで、「われわれも総合スーパーはつぶさに承知しておらず、素朴な疑問も含めて佐古社長にぶつけた」と話す。

 「対等な精神で経営統合する」と今年3月に掲げたファミマとユニーだが、両社の勢いの差は歴然としている。直近の2015年度上半期の決算も、ファミマが最高益を計上する一方、ユニーグループはコンビニや総合スーパーが想定以上に振るわず、増益予想が一転して営業減益となった。不振店舗の減損も響き、6年ぶりに最終赤字に転落した。

■ スーパーの経験がない不安

 あるユニー関係者は「ファミマと伊藤忠は総合スーパーを経営したことがないので不安が大きいのだろう。どうしてもリストラが中心になってしまう」と解説する。越田次郎・取締役専務執行役員は、伊藤忠がファミマ株の約36%を握る事実を指摘したうえで、「合併の決議は3分の2以上の賛成が必要だから、伊藤忠が反対すると成立しない。伊藤忠の気持ちをある程度酌まないと、統合はうまくいかない」と明かす。

 他方、業界内での序列がより鮮明化してきたのが、サークルKサンクスだ。この上半期は、採算が取れていない約100店を減損対象にするなど、負の遺産を処理。セブン-イレブン、ローソン、ファミマの大手3社が過去最高益となる中、営業利益は約2割減と独り負けだった。

1店あたりの1日の平均売上高(日販)は、首位セブンとは20万円強、ファミマとも約7万円と、厳然たる開きがある。佐古社長は「欠品はないか、店内はきれいかといった基本的なところが弱い」と話す。

 西日本のサンクスオーナーは「15年間やってきたが、売り上げはピーク時の半分。今夏もアイスコーヒー用の氷が切れて仕入れられなかった。大手との力の差を感じる。ファミマと統合して大きくなったほうがいい」と漏らす。反対に、ファミマとの統合で本部との契約内容悪化、看板統一を不安がるオーナーもいる。

 旧サークルKと旧サンクスすら、主導権争いで迷走した結果、いまだ契約などを統合しきれず、他のコンビニへ看板を変える例が後を絶たない。佐古社長は、コンビニのブランド統一について、「一本化を前提にどのブランドにするか協議中だ。サークルKとサンクスが合併したときの経験上、競争力を高めるためブランド一本化を急ぐ必要がある」と話す。

 拡大志向の強いファミマは今年中に、ユニーグループと同じ愛知が地盤のコンビニ「ココストア」を130億円で吸収合併。サークルKサンクスの外堀を埋めて、看板もファミマへと順次転換し、王者セブンを追撃したい構えだ。

■ 「店が多くなったら利益出るわけでない」

 だが、今回の統合について、ライバルは冷ややかだ。セブン&アイの鈴木敏文会長は4月のインタビューで「統合については関心がない」としたうえで、「店が多くなったから利益が出るわけではない。大量に(作ればよい)というファミマさんは商社的な感覚だ」と一蹴する。ファミマに店舗数で抜かれるローソンの玉塚元一社長も、10月7日の決算説明会で「単なる数の膨張は危険だと思う。この商売は1店舗あたりの収益力の強さが重要」と指摘する。現在、ファミマの日販はセブン、ローソンに劣る。中山社長は「店舗があるほど(売り上げを上げるための)取り組みは容易になる」と話すが、効果は未知数だ。

 はたして新たな流通連合はもくろみどおりの成長を描けるのか。多くの課題を抱えた船出になりそうだ。