「マイナンバー」通知スタート 受け取りを拒否したらどうなるの?

赤ちゃんからお年寄りまで、日本に住む全ての人に番号をつける「マイナンバー制度」の通知が10月から始まった。国民一人ひとりの住民票の住所あてに「通知カード」の発送が進められている。しかし、マイナンバー制度については根強い反対意見があり、「受け取りを拒否しよう」との呼びかけがネット上などで見られる。果たして、マイナンバーの通知を拒否したらどうなるのか。現実的に、そのような対応は可能なのだろうか?

「受け取り拒否」呼びかけるツイートが反響

「政府が一番恐れているのがマイナンバーの受け取り拒否です。……国民の過半数が拒否したら、マイナンバー、終わります」。今年春ごろ、ネット上でこのようなつぶやきが現れた。すると、多くの人がこのメッセージを拡散。「国に管理されたくない」「みんなで拒否しよう」などと反響が広がった。

 マイナンバー制度とは、所得や年金支給額、住民登録のほか、雇用保険、医療保険の手続き、生活保護、児童手当といった福祉の給付など、これまで別々に管理されていた個人情報について、国がすべてひもづけて一元管理できるようにするもの。マイナンバーは12ケタで、原則として一生変えられない。つまり、国はマイナンバーを今後、日本で暮らす人々が社会生活を送るうえで必要不可欠な個人情報に位置付けようとしている。

 しかし、このマイナンバー制度。ネット上での声にも見られるように、国民の間で理解が進んでいるとは言い難い。内閣府が今年7〜8月に実施した調査でも、回答者のうち34.5%もの人が「個人情報漏えい、プライバシー侵害」 を不安視。また、「国に個人情報が一元管理され、監視、監督される」と心配する人も14.4%に上った。

 マイナンバーについては、「国民にメリットは少なく、国民から税金を取りやすくするなど、役人が得をするための制度」との声も根強い。制度の発足に伴って巨額の利権が生まれている。実際に10月13日には、マイナンバーに関する公共事業の発注に伴い、厚生労働省の職員がIT業者から100万円の賄賂を受け取っていたとして警視庁から逮捕される汚職事件も発生。人々のマイナンバーを見る目は厳しさを増している。

受け取らなくても「番号」は消えない

では、国民はこのマイナンバー通知を拒否することはできるのか? 10月から始まったマイナンバーの通知は、市区町村から郵便の「簡易書留」によって行われる。通知は、家族分まとめて世帯主あてに届く。不在の場合は1週間以内に郵便局に取りに行くか、再配達してもらう。そこで受け取られなかった通知は、住所地の市区町村に返送され、役所内で保管されるという。

 これを無視し続けると、どうなるのか? そもそもマイナンバーは、本人の意思にかかわわらず、10月5日時点の住民票コードを元にして、コンピューターで自動的にすべての日本国内在住者の番号が生成される。たとえ通知が返送されても、その人のマイナンバーが消えるわけではない。

医療保険や年金給付、会社に提示する必要

では、自らに割り振られたマイナンバーを知らないままの人は、今後どのような不利益を被るのだろうか。

 2016年1月から、社会保障・税などの手続きの際、マイナンバーの提示を求められるようになる。自己への直接的なメリットが乏しい納税や住民登録はともかく、雇用保険や医療保険、年金、生活保護、児童手当など福祉の給付といった場面で、マイナンバーを提示できなければ、かなりの面倒や不利益を強いられることが予想される。

 また、企業などに勤める従業員は、会社へのマイナンバーの提出が義務づけられる。納税や社会保険で必要なためだ。内閣官房サイトの「よくある質問」には、「従業員等がマイナンバーの提供を拒んだ場合、どうすればいいですか? 」との質問がある。これに対し、回答では「マイナンバーを記載することは、法令で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください」としている。勤め人がマイナンバーを拒否すれば、会社の総務担当者を困らせることになる。

 結局、本人がマイナンバーを受け取ろうが拒否しようが、番号は割り振られている事実は変わりがない。そして本人の意思に関わらず、社会はマイナンバーを前提とした仕組みの整備が進み、外堀はどんどん埋められていくだろう。法的な縛りがある以上、たとえマイナンバーの通知を拒否しただけでは、「制度を終わらせる」ことは現実的に難しい。本当に国の制度を変えたいのなら、国政選挙で声を上げるのが正道ということだろう。