渋滞名所の海老名JCT、改良で汚名返上か 実走で見えたその効果

渋滞名所のランプウェイが車線倍増で

 圏央道の桶川北本IC〜白岡菖蒲IC間の開通を翌日に控えた、2015年10月30日(金)。圏央道と東名高速が交差する海老名JCTで、“渋滞名所”になっていた東名上り線から圏央道外回り(北行き)へ向かうランプウェイ(連絡路)が、1車線から2車線になりました。事前告知なし、突然の改良でした。

手放しでは喜べない? 圏央道延伸、そこにある懸念

 NEXCO中日本のリリースによれば、その事業概要は以下の通りです。

「本区間は1日に約2万3千台の交通量があり、主に平日の通勤時間帯に(中略)合流部で渋滞が発生しています。東名高速と並行する新東名高速道路が全線開通するまでの渋滞対策として、道路幅は変更せず、車線幅や路肩幅を狭めることで暫定的に2車線運用にするものです」

「更に、圏央道と外回り方向のランプウェイ(編注:東名から圏央道北行きへ向かう連絡路)がスムーズに合流できるよう、圏央道本線(外回り)の一部区間で2車線から1車線運用とするものです」

 私(清水草一)はこれまで数回にわたって海老名JCTの欠陥構造について指摘してきただけに、今回の改良実現には喜びもひとしおです。2車線化実行の翌日に早速、実走してみました。

 正直、呆然としました。あまりにも自然で、何の違和感もなかったからです。むしろ最初からこういう区画線を想定して設計したのではないか、と思ったほどです。

 実際、その可能性はゼロではありません。過去、首都高と外環が交わる美女木JCTでは、JCT内の信号機の設置に公安委員会が安全面で難色を示し、区画線を変更させたことがあります。今回も「ひょっとして?」という疑念を抱かせるほど、仕上がりは自然でした。

 今回の海老名JCT実走時、これまでの混雑は嘘のようにゼロで、スカスカという表現がピッタリでした。これでもう二度と自然渋滞は発生しないでしょう。

ランプウェイを2車線化できたカラクリ

私(清水草一)としては、当該ランプウェイを拡幅せず2車線化するのは不可能と考えていました。現場の幅は約7メートル。1車線の幅は3.5メートルですから、2車線取ったら路肩はゼロになり、白線すら引けません。加えて、2車線のまま圏央道の本線に合流させるには、合流部の延長が短すぎると考えたからです。

 NEXCO中日本によると、「これまでは、右側の路肩が2.635メートル、車線が3.5メートル、左側の路肩が1.125メートルでしたが、今回は車線を3.25メートル×2に狭め、路肩を0.38メートルずつとしてあります。ほとんど路肩がないような状態になっていますので、注意してご利用ください」とのことでした。

 確かに両際は壁ギリギリに白線が引かれているだけで、路肩はありません。しかしこういった形態は首都高では当たり前ですし、危険というほどではありません。

 車線幅の3.25メートルに関しても、高速道路で認められている最低限の数字はクリアしており、走ってみても狭いとは感じませんでした。大型特殊車には幅が3メートルを超えるものもあり、隣の車線にこういった超大型トレーラーがいる時は注意が必要ですが、それ以外は何の問題もないでしょう。

合わせて圏央道本線への工夫も

また今回の改良では、圏央道の本線側を2車線から1車線に絞ることで、先述した合流路の短さの問題もクリアしています。もともと圏央道の本線側は交通量が断然少なかったので、1車線に絞っても大丈夫です。

 今回の改良を「お見事!」と言うべきか、「最初からこうしておけば……」と言うべきか複雑ではありますが、改良であることには間違いないので、全面的に肯定したいと思います。

 この改良により、東北道までつながった圏央道最大の懸念材料が消滅しました。圏央道はきっと期待に応えるでしょう。

 今回のランプウェイ2車線化は、新東名開通(2020年度予定)までの“暫定運用”となっていますが、恒久的にこの形を維持すべきです。確かに新東名が海老名南JCTまで開通すれば、そちらから圏央道に流入するクルマが増えるぶん、海老名JCTの交通量は分散されます。

 しかし、名古屋方面から圏央道外回り(北行き)へ向かうクルマは東名経由のほうが近道のため、ナビはそちらを指示します。また東京側から圏央道へは、引き続き東名でしかアクセスできないため、新東名開通後に元の形に戻せば、再び渋滞が発生する可能性があるからです。

この手法、東名の渋滞名所にも適用可能?

なお、この改良の手法は、ほかのいくつかの場所にも応用できそうです。

 第一は、海老名JCTの圏央道内回り(南行き)から東名方面へのランプウェイです。ここは、今回改良された外回り(北行き)側ほどではありませんが、同じく1車線の上り坂のため速度が低下する構造で、通勤時間帯に渋滞を発生させています。ここも分岐点まで2車線化すれば、渋滞は根絶されます。

 東名本線の大和トンネルも、現状のままで4車線化が可能でしょう。私はこれまで、大和トンネルの蓋を外さなければ4車線化は無理と考えていましたが、海老名JCTで認められたのなら、大和トンネルもなんとか可能なはずです。

 また今回の圏央道のように、あくまで“暫定運用”が条件というのなら、新東名が横浜環状線に延長されるまでの暫定とすればいいでしょう。その実現がいつになるかまったく見えていませんが、いつか造るという構想だけは存在するのですから。