俳優・伊勢谷友介が「社会的活動」を続ける理由

人気俳優でありながら、社会的活動を精力的に行っている伊勢谷友介氏。俳優業とはまったく異なる事業をなぜ始めたのか?その真意を聞いた。


――伊勢谷さんは’09年に株式会社リバースプロジェクトを設立、衣食住をはじめとした社会的活動を広く行っています。どうしてこのような活動をするようになったのですか?


伊勢谷:僕がこの会社をつくった目的は「人類が地球に生き残ること」、そして「責任を持って未来を子孫に引き継ぐこと」です。今の人類は戦争以外でも、いろいろなことが原因で滅びる可能性があります。原子力でも、温暖化でも、食糧や水の枯渇でも、環境破壊でも。未来が絶望的であることを思って、2回鬱になった知り合いもいます。


経済成長がより良い未来をつくるかといったら、そうならないことはみんなわかり始めている。でも政治家は選挙で票を取らなければならないから、いまだに「経済成長」を訴えている。「では、どんな方法がいいのか?」「こうしたほうが世の中はうまくいくんじゃないか」という、具体的な方法を考えていこうと思ってつくったのが、この会社です。


――リバースプロジェクトが実際に行っている活動には、非常に小さな事業が多いのも特徴的ですね。


伊勢谷:僕は、大それたことをやるつもりはないです。また目的は同じでも、お金を生み出すことができる事業と、自治体などと組んで補助金でやる事業を使い分けて活動しています。


自分ができる範囲で、できることをやればいい。「二足のわらじを履かず、俳優だけやっていればいい」と批判する人もいますが、僕は二足でも三足でも、できる範囲でしたらいいと思います。


誰でも、その立場で必ずできることがある。僕も、映画やドラマの世界でできることがある。でもそれはフィクションの世界であって、もう一つ現実的な取り組みとしてできることをしたいなと思ったのがリバースプロジェクトの活動なんです。


――活動の内容は、非常にバラエティ豊かですね。


伊勢谷:思いついたことで、できることはまずやってみようと。例えば今は、オーガニックコットンに取り組んでいます。


コットンは生産を安定させるために農薬を多量に使用しています。だからこそ安いんですね。でも、それでは生産者も土地も疲弊してしまう。


それから、「RICE475」というプロジェクトも行っています。新潟県南魚沼市で、減農薬・無農薬でコメを生産しているんです。これから田んぼにダイレクトにつながって、直接お金を払える仕組みをつくっていきたいと思っています。


我々は何のために生きているのか。贅沢な生活をしたり、あくせく働くために生きているんじゃない。ただひたすら「命を未来につなぐ」ために生きている。とすれば、考えることはただ一つ。「人類が地球に生き延びるためにはどうすればいいか」ということ。


そのためにこの命を使いたい。


「利己」ではなく、「利他」のためにどれだけ尽くせるか。命をどれだけ使える覚悟があるか。それが僕の生きるエネルギーになっています。


※このインタビューは週刊SPA!11/17号「【日本の環境を守るキーパーソン】伊勢谷友介」より一部抜粋したものです


【伊勢谷友介氏】


76年生まれ。俳優、映画監督、実業家。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了。大学在学中からモデルとして国内外で活躍。劇場版『MOZU』が公開中。『リトルプリンス 星の王子さまと私』が11月21日公開