足不自由の姉、山に置き去り 震災で自宅全壊「煩わしくなった」 遺棄容疑で63歳逮捕/千葉

2011年3月の東日本大震災で自宅が全壊し、約1カ月後に同居していた足に障害がある姉を山林に置き去りにしたとして、千葉県警捜査1課と山武署は18日、保護責任者遺棄の疑いで弟の無職、黒川勝雄容疑者(63)=香取市笄島=を逮捕した。黒川容疑者は容疑を認め「体の不自由な姉が煩わしくなった」と供述。姉は置き去り現場近くの川で遺体で発見された。県警は置き去りと死亡の関係を慎重に調べる。

 逮捕容疑は11年4月初旬ごろ、君津市黄和田畑の山林に足に障害がある姉の幸子さん=当時(60)=を連れて行き、置き去りにした疑い。当時、2人は山武市小松で一緒に暮らしていたが、東日本大震災で自宅が全壊し、周辺を転々としていたという。

 山武署が10月9日、横芝光町の神社であったさい銭盗事件で黒川容疑者から事情を聴いていたところ、黒川容疑者が「姉を清澄山近くにある山林に置き去りにした」と供述を始めた。捜査の結果、11年4月19日に置き去りにしたとされる現場から5、600メートル離れた小櫃川で見つかっていた遺体が、身体的特徴から幸子さんと判明した。死亡解剖では水死とみられ、死後2週間から1カ月が経過していた。

 同課によると、黒川容疑者は「住む家がなくなり、体の不自由な姉が煩わしくなって置き去りにした」「タクシーで南房総方面に向かった」「食べ物を置いてきた」などと供述。幸子さんは足が不自由だったが、自力で歩けたとみられ、現場から移動しようとした可能性もあるという。

 同課や山武市によると、黒川容疑者らが当時暮らしていた小松地区は太平洋岸にあり、津波の直撃で家屋倒壊などが続出。同市内で最も大きい被害が出た地区の一つだった。黒川容疑者らは国から支援を受けられる全壊の罹災(りさい)証明書を受けていた上、近くに親族がいたが身を寄せることはなかったという。

 近所の男性は「(黒川容疑者らと)ほとんど付き合いはなく、あいさつをする関係でもなかった。トラブルはなかったが、時折騒ぐ男の声がした。どんな人が住んでいたか、女性がいたかどうかもわからない」と話した。