諮問会議 首相、最低賃金1000円指示 年3%増めど

安倍晋三首相は24日の経済財政諮問会議で、現在全国平均798円の最低賃金を来年以降、毎年3%程度ずつ引き上げて、全国平均で1000円を目指すことを表明した。週内にまとめる「1億総活躍社会」実現に向けた緊急対策に盛り込む。安倍首相が掲げる「名目国内総生産(GDP)600兆円」の目標に向けた緊急対策の目玉にする考えで、最低賃金の引き上げによる消費喚起を促す強い意欲を示した形だ。

安倍首相は会議で、2020年ごろにGDP600兆円を実現するためには、「賃金上昇による継続的な好循環の確立をはかるとともに、最低賃金もこれにふさわしいものにしなくてはならない」と述べ、対応策を関係閣僚に指示した。3%の最低賃金の引き上げは約24円の引き上げ幅となり過去最大だった今年度の18円増(2.3%増)を大きく上回り、ハードルは高い。政府が賃上げや最低賃金の引き上げにこだわるのは、昨年4月の消費税率引き上げ以降、GDPの6割を占める個人消費の低空飛行が続いているからだ。

 また、円安効果などで企業収益が過去最高水準になっている一方で、賃上げや設備投資の伸びは小さく、企業の内部留保や手持ちの現金・預金が増える傾向にある。このため、政府内では「内部留保をもっと賃上げに使うべきだ」という発言が相次いでいた。

 最低賃金は、労使代表や学識者で構成する中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が毎夏、引き上げの目安を決定している。最低賃金の引き上げを政府が強制することはできないが、甘利明・経済再生担当相は「賃金の引き上げは、消費の底上げにとって大きな影響がある。審議会に働きかけていきたい」と述べた。今年は安倍首相が7月の経済財政諮問会議で大幅引き上げの検討を指示、首相主導で決まった経緯がある。首相の最低賃金引き上げの表明は、2年連続で首相主導を目指す姿勢を示したものだ。

 また、日本は欧米諸国と比べて最低賃金の水準が低い。先進国の主要都市では最低賃金がおおむね円換算で1000円を超えているのに対し、日本は東京でも907円にとどまっている。このため民主党政権時代の10年にも、政労使で「20年までに全国平均1000円、全国最低800円」の目標を掲げていた。甘利氏も24日、最低賃金1000円の達成時期について、20年代半ばになるとの見通しを示した。