間一髪、隣家住民救う 新聞配達員、叫びながらドアたたく 北海道恵庭の住宅火災

「お隣が火事です。起きてください」。懸命に叫ぶ声と激しくドアをたたく音が、夜明け前の住宅街に響いた。28日未明の北海道恵庭市黄金南で1人が死亡した住宅火災で、新聞配達中に火災に気付いた北海道新聞恵庭東部販売所の配達員小出幸子さん(68)=同市黄金南2=が、就寝中だった両隣など3軒の住民を起こして回り、惨事の拡大を防いだ。

 小出さんは同日午前4時半すぎ、乗用車で配達中、焦げた臭いに気付いた。次第に目が痛くなり「火事だ」と確信。配達を中断し、5分ほど周囲を見回った末、火災現場にたどり着いた。

 到着時、鈴木さん方は玄関フードのガラスは割れ、火が噴き出していた。東側の隣家、自営業吉川昌宏さん(45)方にも火が迫る勢いだったため、即座に知らせに行った。吉川さん方の玄関ドアをたたいて、一家4人を起こすとともに119番通報を依頼した。さらに、足が不自由な女性(95)ら2人が暮らす西側の住宅などにも駆けつけ、避難するよう伝えた。

 小出さんは「暗くてインターホンのボタンが見えなかったので、とにかく懸命にドアをたたいた。火が迫っていて無我夢中だった」と振り返る。

 妻(46)と長女(15)、長男(13)と共に逃げることができた吉川さんは「就寝中に聞こえた誰かの声のおかげで一家全員が助かった。知らせてくれた人に感謝したい」と、激しく燃えた自宅をぼうぜんと見つめながら話した。