103年の秘湯、後継者難で幕 蘭越・新見温泉、来年3月に

3代目「引き継ぐ人現れてほしい」

 【蘭越】ニセコ連峰の山あいの秘湯として知られ、創業103年の歴史を持つ後志管内蘭越町の新見温泉が来年3月末で幕を下ろす。源泉を共有する二つの温泉宿があり、いずれも後継者難で継続を断念した。ミネラル分の多い泉質はファンが多く、経営を担ってきた3代目は「できれば、素晴らしい泉質の温泉を引き継ぐ人が現れてくれれば」と願っている。

新見温泉は蘭越町市街地から車で峠道を越えて約15分、目国内(めくんない)岳(1220メートル)の南東麓に位置する。広島県から入植した新見直太郎さんが泉源を見つけ、1912年(明治45年)、温泉旅館「新見温泉」を始めた。湯どころの蘭越町の中でも現存する温泉で2番目に古い。

 54年に本館の隣に新館が完成。60年に本館と新館を直太郎さんの息子たちで分け、それぞれ「新見本館」(22室)、「新見温泉ホテル」(20室)とした。いずれも宿泊と日帰り入浴の客を受け入れている。

冬は露天風呂囲む雪庇有名

 源泉は無色透明で、毎分300リットルの湧出量を誇り、リウマチや神経痛などに効くと評判だった。最盛期は秘湯ブームの風が吹いた90年代前半で、二つの施設で宿泊客数は年間約1万5千人に上った。

 本館は、冬場になると露天風呂を取り囲むように厚さ約3メートルに成長する雪庇(せっぴ)が有名だ。直太郎さんの孫で社長の新見健さん(74)は「勢いがあったころは平日も客室がびっしり埋まった」と振り返る。

 ブームが去った後も根強いファンに支えられたが、その固定客も高齢化が進み、次第に利用者が減少。跡継ぎが見つからず、廃業を決断した。

 木々に囲まれた露天風呂が自慢の温泉ホテルは、近年は北欧などからスキー客も訪れた。しかし、後継者がおらず、父から経営を継いだ新見光行さん(68)は「常連客に愛されてきたが、体力の限界」と話す。

 源泉の土地を共有していることから、ともに後継者に悩む2人が相談し一緒に閉館することを決めた。ただ、温泉の灯を消すのは忍びなく、2人は「温泉を活用してくれる企業が現れないか」と期待をつなぐ。本館は3月26日、温泉ホテルは同31日に閉館する。