特殊詐欺 手口多様化 阻止率トップクラス、群馬の工夫

「特殊詐欺」の手口が多様化している。群馬県内の特殊詐欺阻止率は67.2%(11月末現在)と全国トップクラス。犯人グループは、被害防止対策が進んだ金融機関から送金させるのを避け、宅配便やレターパックで現金を送らせたり、電子マネーをだまし取ったりと、巧妙に新手法を考え出す。県や県警、金融機関、宅配業者などでつくる「振り込め詐欺等根絶協議会」が対応に追われている。

 県内の特殊詐欺の被害額は11月末現在で6億2550万円(前年同期比22%減)。被害件数は25%減の174件で、うち53件が振り込み型だった。一方、317件の被害を未然に防いだ。

 群馬銀行は、特殊詐欺が急増した13年秋以降、高齢者が支店窓口で高額の振り込みを依頼したり、携帯電話で話しながらATM(現金自動受払機)を操作したりするケースでは、声をかけている。この結果、14年度81件、15年度167件、15年度は9月までに40件を阻止した。一番の悩みは「余計な時間がかかる」と顧客に嫌がられること。群馬銀の担当者は「ひるまず対応している」と話す。

 犯人グループは、無人のATMコーナーや、インターネットバンキングから振り込むよう指示するようになった。これに対し、インターネット専業のジャパンネット銀行は13年に独自のモニタリングシステムを導入し、不審な送金をリアルタイムで監視している。詐欺の可能性が高いと判断した場合には、本人に確認する前に即座に口座を凍結する。18日には詐欺被害を防止したとして前橋署から表彰された。

 また、現金を郵送させる手口も増加中。昨年の被害261件のうち郵送型は28件だったが、今年は11月末までに38件の被害が発生している。「『レターパックで現金送れ』はすべて詐欺です」。レターパックの裏面には目立つように印刷されている。郵便局の窓口では、宛名が私書箱や郵便局止めになっている場合は、差出人に注意を促すことにしている。それでも、レターパックはポスト投函(とうかん)でも発送できるという盲点がある。

 今年に入って電子マネーを使った詐欺が4件発生した。出会い系やアダルトサイトの使用料の名目で請求するケースが多い。電子マネーは、ネットに接続したパソコンやスマートフォンがあれば、番号を入手するだけで現金同様に使える。電子マネー詐欺から振り込め詐欺に誘導し、高額をだまし取るケースもある。県警はギフト券の大量購入者には注意を促すようコンビニエンスストアに依頼している。

 県警は今年、特殊詐欺特別捜査室を8人増員した。11月末現在、県内の特殊詐欺の検挙は68人119件(前年同期比29人62件増)。県警捜査2課は「県内の検挙率が上がることで詐欺グループに『群馬は詐欺が難しい』と思わせることができる」と説明している。