電力自由化 多様な新料金プランは賢く選ぼう!「月5000円以上使っていれば変更メリットあり」と言うけれど…

4月に始まる電力小売りの完全自由化に向けて、電力サービスの新料金プランが出そろってきた。「◯にすれば△円お得!」と切り替えによるメリットを強調する会社は多いが、選び方によっては割高になることも。使用量や使う時間帯などで見極める必要があるが、なにも4月までに決めることはない。夏に向けてさらに新プランが登場する可能性もあり、利用者の意見などを参考にじっくり考えるのもいい。選ぶ目安や注意点をまとめてみた。

 「基本的にほとんどの家庭で見直しのメリットがあります」。こう話すのは、ウエブ上で「新電力比較サイト」を運営する石井元晴さん(24)。石井さんは、総務省の「家計調査」などを基に世帯人数ごとの標準的な電気使用量を設定し、従来の電気料金とこれまでに出そろった新料金プランを比較、結果をサイトで紹介している。

 見直しのメリットがより大きくなるのは、一概にはいえないが、月の電気料金が平均5000円超と使用量が多い家庭だ。新電力会社は、使用量が増えるごとに東京電力など従来の電力会社より「安くなる率」が高くなるように、設定している会社が多いためだ。

 使用量に関係なく、全国どこでも従来の電気料金より5%安い料金プランとしたのは、登録申請中の「HTBエナジー」。親会社のハウステンボス株式会社(長崎県)の広報担当者は「独り暮らしから大家族までどんな世帯の方が利用しても損をしないように一律5%オフにした。従来の電力会社より安くできるのは、コストカットなど企業努力によるものです」と説明する。

 5%は昨年12月の電気料金を基にしているといい、従来の電力会社が今後値下げした場合、その料金を基に計算し直していくという。同社のグループ会社である旅行会社「エイチ・アイ・エス」は、旅行と電気の同時申し込みで旅行代金を割引くキャンペーンを3月末まで行う。

 東電管内に限定すれば、ENEOSでんきは2年契約の場合、2人以上の世帯で東電よりも6〜8%安くなる可能性がある他、「ENEOSカード」利用を条件にガソリンや灯油がリッター1円安くなるセット割引もある。

 関西エリアで3人以上の世帯では「イーレックス」が関西電力に比べて6%前後安くなり、平均的な使用量の場合、3人世帯で年間7500円、4人世帯で1万円安くなる可能性がある。

 ただし、使用電力が少なかったり、オール電化プランを契約したりしている世帯では、切り替えで逆に高くなるケースもある。「注意が必要なのは『30アンペア未満』と『月々平均4000円未満』の世帯。携帯電話などとのセット割は仕組みが複雑なので、切り替える場合はしっかり検討して」と石井さん。

 電気料金とは別に、独自のサービスで話題を集めている会社もある。「スマ電」は、スーパーマーケットと提携し「スーパーの買い物ポイント付与」などのサービスを提供する。東京ガスは、電気とガスのセット契約をすることで料理サイト「クックパッド」の有料機能の一部を無料で利用できる。

 4月の自由化を前に、「早期申し込み割引」などをうたい、切り替えを促す電力会社は多い。どうせ切り替えるなら早い方がいいのだろうか。石井さんは「4月以降に参入する企業もあるので、夏頃から検討を始めるのがいい」とする。すでに料金プランを発表している会社も、他社のプランを見て追加の値下げを検討する可能性があるなど事態が流動的なためだ。

 誤解が多いのが、新電力に切り替えると、停電などのトラブルが増えるのではないかということだ。

 石井さんは「新電力に切り替えても電力供給ネットワークの仕組み自体は変わらず、今までと全く変わりなく電気を使うことができます。まずは自分がどれぐらい電気を使っているかを調べたうえで、どこを選べばいいかをじっくり検討してみては」と話している。