カンボジア 九州の飲食店、出店加速 ラーメン、肉まん…

経済発展が続くカンボジアに、日本の飲食店が次々と進出している。タイやベトナム、中国などアジア各地に展開してきた日本企業にとって、ミャンマーと並び「最後のフロンティア」と呼ばれるカンボジアへの関心は高く、九州の飲食店も首都プノンペンを中心に出店を加速させている。

 イタリアのデザート、ジェラートの店を福岡市や熊本市など九州を中心に展開する「コレーゴ・アンド・パートナーズ」(福岡市)は、2014年にイオンのカンボジア進出第1号としてオープンした「イオンモール・プノンペン」にイタリア料理店を出店した。

 創業7年余りの会社にとって初の海外進出だった。カンボジアを選んだ理由について、顧問の山口博士(ひろし)さん(50)は「国民の年齢が若く、経済発展とともに所得の上昇も期待できる。富裕層や外国人を皮切りに将来性がある市場だと考えた」と語る。

 イオンモール内には、福岡市を中心にラーメン店を経営する「ディアンドエッチ」が「秀ちゃんラーメン」を出店。10種類の野菜が入る「ベジタブルラーメン」が6米ドルなど、現地の感覚からするとやや高めだが、客は富裕層に限らない。会社員のエンゼル・クンさん(31)は「スープがとてもおいしい。週に1〜2回は来る」と話す。

 14年8月にプノンペン市内に開店した博多料理店「にゃむ」の店長、神宮(しんぐう)健二さん(34)=福岡県篠栗町出身=は「九州もカンボジアも味覚が甘め。焼きラーメンやおでんが人気で、多店舗展開も狙いたい」と強気だ。世界13カ国・地域に「味千ラーメン」の名で展開する重光産業(熊本市)も昨年1月、プノンペン市内に初出店。肉まんの移動販売店舗を始めた長崎市の中古車販売会社「ウイングス」のような異業種からの参入も相次ぐ。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)プノンペン事務所によると、カンボジア商業省に登録している日系企業は12年の179社から15年には250社に増加。日本の飲食店も15年は約180店に上り、12年から倍増した。「経済発展への期待に加え、中国などと異なり、投資規制がなく進出しやすいことも理由」と言う。

 イオンモール・プノンペンには、オープンから1年で1500万人が訪れた。イオンは18年夏、プノンペン市内に2号店をオープンする計画だ。当面カンボジアへの投資熱は冷めそうにないが、同事務所は日本からの飲食店について「現在は淘汰(とうた)されながら新たに進出している状況で、成功しているのは10%程度」とくぎを刺す。

 【ことば】カンボジア経済

 1970年代のポル・ポト政権下の虐殺や内戦などの影響で経済発展が遅れた。日本の外務省のデータによると、人口約1400万人で、農業がGDPの約3分の1、工業が約4分の1を占める。1人当たりGDPは1081米ドル(2014年)と、タイ(6041ドル)やベトナム(2073ドル)などと比べ低いが、11年以降は7.0%を超える高い経済成長を続け、今後も縫製品の輸出や観光、海外からの直接投資の増加などで安定的な経済成長が見込まれている。在留邦人も増え、15年4月にプノンペン日本人学校が開校した。