マイナス金利 白川総裁時就任の4人反対

マイナス金利の導入を巡り、日銀内で激論が交わされていたことが8日、日銀が公表した金融政策決定会合の「主な意見」で明らかになった。マイナス金利は5対4の小差で決定したが、反対した4人は全員が白川方明前総裁の下で就任した審議委員。2012年に発足した安倍政権は、白川前総裁の金融政策から一層の緩和へかじを切らせようと黒田東彦総裁の起用に踏み切っており、ここに来て「黒」対「白」の構図が鮮明になってきた。

 この日公表されたのはマイナス金利導入を決定した1月28、29日の会合での「主な意見」。賛成派は、新興国経済の減速懸念や原油安を背景とした金融市場の混乱に伴い「物価の基調に悪影響が及ぶリスクが増大している」とし、「金融政策の信認を保つ」ためにマイナス金利導入を主張した。一方、反対派は、マイナス金利が金融機関の収益に悪影響を与えるなどの副作用を強調。「危機時の対応策として温存すべきだ」などと導入のタイミングにも異論を示した。

 今回、マイナス金利導入に反対したのは白井さゆり、石田浩二、佐藤健裕、木内登英の各審議委員。4人とも黒田総裁と考え方が微妙に違う白川前総裁時代に任命された委員だ。一方、賛成した原田泰委員と布野幸利委員は安倍晋三首相や積極緩和を主張する首相周辺のリフレ派に近い。岩田規久男副総裁も13年の日銀総裁選びの際に財務省の反対を押し切って官邸主導で人選された経緯があり、政府内では「マイナス金利は『黒田体制』でなければ実現しなかった政策だ」(首相周辺)と自賛する声が出ている。

 審議委員の任期は5年。今後は、マイナス金利に反対した白井委員が3月31日、石田委員が6月29日にそれぞれ任期切れを迎える。白井委員については再任(留任)が取りざたされているが、政府内には「審議委員はリフレ派で固めたい」との意向も根強くある。今後もリフレ派の審議委員が誕生していけば、黒田総裁は安定的な支持基盤を確保できるものの、市場からは「金融政策がより過激に進んでいく危うさがある」と先行きを懸念する見方も出ている。【中井正裕】

 ◇キーワード・金融政策決定会合

 経済や物価情勢を踏まえて金融政策を決める日銀の会合。金融政策は9人の政策委員(正副総裁3人と審議委員6人)が多数決で決める。金融政策は企業活動や人々の生活に大きく影響する。本来、そうした政策は国会の審議を経て決定されるが、金融政策は専門的な知見を必要とするほか、グローバル経済の進展によってその決定には即効性も求められる。このため、内閣が人事案を国会に提示し、国会の同意で選ばれた委員が政府から独立して決定する仕組みになっている。開催は原則年8回。会合は非公開で、決定内容は同日中に総裁が記者会見で説明する。6営業日後に「主な意見」、次回の決定会合で承認のうえ、その3営業日後に「議事要旨」、10年後に「議事録」をそれぞれ公表する。