生活保護費28億円の回収断念 大阪市、返還請求額の3割…罰則もなく

生活保護費の受給率が全国の市町村で最も高い大阪市が、平成26年度までの10年間に不正受給者らに返還を求めた保護費約98億円のうち、約3割の約28億円の回収を断念していたことが9日、分かった。

 一方、回収できた額は約11億円にすぎず、26年度時点での未回収額は約59億円にのぼる。自治体は返還が不可能と判断すれば請求権を放棄できるが、その大半は国が補填(ほてん)する仕組みで、国は回収の徹底を求めている。

 生活保護法は、受給者が収入や財産の額を偽ったり、臨時収入などがあったりした場合、自治体が返還を請求できると規定。ただ、返還請求権は時効のため5年で消滅するため、請求から5年が経過し、受給者の死亡などで自治体が回収が困難と判断した場合、断念することになる。

 大阪市によると、17〜26年度の10年間の返還請求額が計約98億5900万円なのに対し、同期間に市が回収を断念したのは約27億9700万円。回収額は約11億2500万円にとどまり、26年度時点で約59億3700万円が未回収となっている。25年度に回収を断念した額は過去最高の約9億5000万円で、同年度に全国の自治体が回収を断念した総額(約42億円)の約2割を占めた。

 大阪市では返還を求める際、「債務者が生活を維持できる金額」との国の方針に基づき、毎月5000〜1万円程度を回収。継続的に督促状を送付すれば時効が停止するため、5年経過後も返還請求を継続することができる。ただ、受給者側に返済能力がないケースが多く、返還に応じなくても罰則がないため、市担当者は「回収を断念するのはやむを得ない」と釈明する。

 回収を断念した額の4分の3は国が自治体に補填する仕組み。厚生労働省の担当者は「自治体は適切な回収に努めてほしい」と話している。