“一発屋”芸人たちの駆け込み寺? YouTuber化するタレントたち

博多華丸・大吉が『THE MANZAI 2014』で披露した「YouTuberになりたい」という漫才を覚えているだろうか。同大会で優勝した華大はその後、念願通り(?)YouTubeチャンネルをオープンしたが、開設から3ヶ月ほどで更新がストップ。やはり彼らの主戦場はテレビ(+劇場)であり、YouTubeチャンネルを開くこと自体がネタだったのか、あるいは優勝感謝セールのようなものだったのかもしれない。華大はさておき、このところいわゆるタレントの“YouTuber化”が目立っており、一発屋芸人などがYouTubeやniconicoなどに活路を見出しているようだ。

■日本エレキテル連合、ゴー☆ジャス……ネット動画に活路を見出すタレント

 タレントによるYouTubeチャンネルの登録数で群を抜いているのが、「ダメよ〜ダメダメ」が2014年の新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれた日本エレキテル連合と、「君のハートにレボリューション!」のキメゼリフによる宇宙海賊キャラでブレイクしたゴー☆ジャスだ。「日本エレキテル連合の感電パラレル」では毎日1本というハイペースで新作を公開。大ブレイクした「未亡人の朱美ちゃん3号シリーズ」だけでなく、多彩なコント動画を披露している。「ゴー☆ジャス動画@Game Market」はゲーム実況ジャンルであり、こちらもほぼ毎日動画をアップ。本人のゲーム愛に基づいた豊富な知識による解説はもちろん、芸人やアイドルといった本人と交流のあるゲストとのトークも人気だ。

 テレビからお呼びがかからなくなった一発屋芸人にとって、再生数に応じて収入が得られるYouTubeはまさに新たな活路と言えるだろう。しかし話はそう単純なものでもない。事実、波田陽区、ヒロシ、小島よしおといった数々の一発屋芸人がYouTubeチャンネルを持っているが、その登録者数や再生回数は悲しいほど伸びていない人が多い。元Wコロンのねづっちなどは、鉄板ネタである「整いました」の謎かけ動画を豊富に公開しているものの、再生数3ケタに満たないものも多く、それがむしろ「ジワジワくる」とネットユーザーに揶揄されるほどだ。

 YouTubeで再ブレイクできるか否かの明暗はどこにあるのか。そのヒントは冒頭で紹介した博多華丸・大吉の漫才「YouTuberになりたい」に見い出せそうだ。同ネタはカリスマYouTuberの人気ぶりに目を付けた華丸が、「我々プロがやったらもっといい作品ができれるんじゃないか」と息巻いてさまざまな動画のアイディアを出すも、「テレビと同じことやってもしょうがない」「ターゲットがわからない」等と大吉にバッサリ切られ、最終的に「あなたYouTuberに向いてない」と突っ込まれて終わる。そこには現在ウケているYouTuberの要素が冷静に分析され、それがいかに「テレビ的ではないか」がズバリと指摘されていた。

■YouTuber化したタレントの到達点はどこに?

 裏を返せば、どんなに面白くてもテレビ向きではない芸人はいる。たとえば日本エレキテル連合はもともとキャラだけでなく、綿密な台本に基づいたコントに評価が高かった。しかしテレビの尺ではネタ番組でもない限り、コントをガッツリと披露できる場はなかなかなく、必然とキャッチーな「朱美ちゃんと細貝さん」キャラばかりがフィーチャーされてしまったというわけだ。また彼女たちは性格がシャイで、フリートークはあまり得意なほうではないという。しかしYouTubeであれば尺を気にすることなく、存分にネタを披露することができる。芸人の本分であるネタで勝負したい彼女たちにとっては、YouTubeはテレビよりもずっと生き生きできる場なのかもしれない。

 また、テレビというのはある程度の万人ウケが要求されるため、一種の笑いの要素ともなる毒っ気が排除されるむきがある。そうした笑いはこれまで主に劇場で披露されてきたが、ネットはテレビに比べて規制が少ない分、エクストリームな芸でも披露できるところは劇場感覚に近い。

 とはいえ、華大が漫才で指摘(?)したように、人気YouTuberたちはユーザーの傾向を自分なりに分析した上で、見せ方をかなり綿密に練って動画を制作・配信しており、ただ安直にネタ動画を作って公開すれば成功する、という甘い世界ではないのは、一発屋芸人たちがアップした動画の再生回数にも如実に表れている。

 ネット動画に自身の居場所を見つけるのも正解のひとつだが、やはりタレントとしての本懐は、テレビや舞台での活躍にある。YouTubeなどで脚光を浴びたタレントには、それをきっかけに、再びテレビや舞台で新しい芸を見せてくれることに期待したい。