4輪駆動、なぜスバルは「AWD」? 「4WD」でない理由

「4WD」と「AWD」

 富士重工業は2016年3月2日(水)、同社の自動車ブランドであるスバルのAWD車生産台数が、累計1500万台を達成したと発表しました。同社がAWDを手掛けて44年目での達成です。

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「AWD」とは「All Wheel Drive」、つまり「全輪駆動」の意味。国内の他メーカーでは、「4WD」「4駆」と呼びならわすことが多いものですが、海外で「AWD」という呼びかたはわりと一般的です。

 なぜスバルは、「4WD」ではなく「AWD」なのでしょうか。同社の広報担当者によると、スバルが「AWD」という呼びかたを使用し始めたのは20年ほど前。「『他社との差別化』というマーケティング上の理由」があるといいます。

「AWD」でなにが差別化できるのか? 背景にある歴史

 いまから44年前の1972(昭和47)年、世界初の4輪駆動乗用車としてスバル「レオーネ エステートバン 4WD」が誕生しました。きっかけは、宮城スバルが富士重工に持ち込んだ1台の試作車です。

 当時、宮城スバルの大口顧客であった東北電力は土地柄、冬季の業務にジープタイプの4WD車を使用していましたが、走破性は高くとも日常使用に適さないなど、不満があったといいます。

 そこで東北電力は、自社で特装車を手掛ける知識と、クルマ好きだった社長(当時)の「スバル車の水平対向エンジンと4WDとのマッチングに高い可能性を感じる」という推察を元に、宮城スバルに乗用車タイプの4WD車制作を依頼しました。

 宮城スバルは、「スバル1000」をベースに4WDモデルの製作を開始。他社モデルのデフやドライブシャフトを装着し、試行錯誤を重ね、10ヵ月の開発期間を経て「スバル1000バン4WDモデル」が完成しました。宮城スバルは富士重工に量産を打診します。

 その仕上がりは上々で、さっそく量産モデルの開発がスタートしますが、スバル「1000」がモデル末期だったため、プロジェクトはフルモデルチェンジ後の「レオーネ」へ引き継がれることになりました。それが、前述の「レオーネ エステートバン 4WD」。1972(昭和47)年8月のことです。

 スバルの4輪駆動車はこのように「日常の乗用」のため誕生し、進化してきました。同社が「4輪駆動車」に対し「AWD」と呼称している背景には、非日常的でオフロード色が強い「4WD」という表現に対する差別化の意図があるのかもしれません。