ビックカメラが決断、「家電以外で生き残る」


もはや家電だけでは生き残れないのか。家電量販店の競争が、より厳しさを増していきそうだ。

 ビックカメラの2016年8月期第2四半期(2015年9月〜2016年2月)決算は、売上高が3944億円(前年同期比0.3%増)、営業利益は117億円(同40.8%増)と前期を大幅に上回り、第2四半期としては過去最高の業績だった。上期決算を受け、同社は業績予想を上方修正。通期でも過去最高営業益を更新する見込みだ。

■ 子会社コジマに客が戻ってきた

 営業利益の伸びの主因は、子会社のコジマの改善だ。コジマは、売上高が1114億円(前年同期比1.0%増)営業利益1.5億円(同2億円の赤字)と黒字化を達成した。

 経営不振に陥ったコジマは、2012年6月にビック傘下に入り、再建を目指していた。これまで、不採算店を軸に75店を閉鎖(現在の店舗数は143店)。店舗改装や品ぞろえを拡充することで、離れていた顧客を呼び戻してきた。これらの取り組みがようやく実を結び、ビックの連結業績に貢献できるまでになった。

 さらに、業界全体の価格競争の落ち着きや粗利益率の高い高額商品の販売が好調なことも利益向上に貢献。ビックの訪日観光客向けの売上高が前年同期比で165%伸びたことも大きかった。

 コジマが息を吹き返したことで、ビックは中期経営計画を発表。2021年8月期までに売上高1兆円(今期予想8000億円)、経常利益率5%(同2.8%)を目指す。1兆円達成のために「持続的な成長に必要な出店、インバウンド、EC、新規分野を強化する」(ビックカメラの宮嶋宏幸社長)。

新店はビックカメラが年間1店、コジマが4〜5店ペースで増やしていく方針だ。訪日客については、既に中国最大の格安航空会社である春秋航空との業務提携や、日本空港ビルディングと免税店を運営する合弁会社を設立するなど手は打ってきた。その効果が今後徐々に現われる見通しだ。

 新規分野についても、ドラッグや寝具などの専門店を積極的に出店していく。つまり、ビックは家電販売にこだわらない戦略を打ち出したと言える。

 もちろん、現状のビックの収益を支えるのは、国内の顧客に向けた家電販売。ただ、家電量販店で1兆円を超える売り上げがあるのは、47都道府県全てに店舗網を持つヤマダ電機のみ。さらに、経常利益率5%を越えているのはインターネット販売に強みを持つヨドバシカメラだけだ。

 国内市場は買い替えが中心で、人口減少による需要減も影響するため、大幅な伸びは見込めないのだ。

■ 計画達成に向けた懸念要素は多い

 5年間で売上高2000億円を上乗せするのは容易ではなさそうだ。国内市場の鈍化だけでなく、家電メーカー再編の動きも見逃せない。

 東芝の白モノ家電事業は、世界大手の中国・美的集団に売却された。シャープも台湾・鴻海精密工業の傘下に入り、「魅力的な商品が減少するのではないか」という懸念もある。宮嶋社長は「オリジナル性のある商品を開拓していきたい」と説明。PB商品の開発や中小メーカーの独自品などの開拓を積極的に行っていく構えだ。

 拡大を狙う訪日客向けにしても、全体に占める売上高比率は10%程度(ビック単体)。宮嶋社長も「20%、30%と増えるものではない」と話す。さらに「高額な時計やカメラから、価格の低い時計や理容・美容家電などに購買が変化している」と懸念を示している。

 こうした状況を鑑みるに、中期計画が容易に達成できる目標でないことは確かだ。だが、生き残るには、活路を見い出し、新分野に挑戦するしかない。家電以外に挑むビックの覚悟が試されることになる。