「オレオ」の販売終了で山崎製パンに迫る転機


「オレオが日本で買えなくなる?」

 2016年2月、山崎製パンが、クッキー「オレオ」やクラッカー「リッツ」の製造・販売を終了する、と発表すると、ツイッターなどのSNS上では、悲鳴にも似た投稿が散見された。

■ 8月末でライセンス契約終了

 ただし、これらの人気ブランドが日本から消えるわけではない。9月からは外資系菓子メーカーのモンデリーズ・ジャパンが同ブランドの製造と販売を担うからだ。同社の米国本社と山崎製パンとのライセンス契約は8月31日をもって終了する。

 1970年から40年以上続いた契約の解消は、好調な山崎製パンの業績に陰を落とす。

 山崎製パンは、子会社のヤマザキ・ナビスコを通じ、「チップスター」や「エアリアル」などの自社商品のほか、モンデリーズ(旧ナビスコ)とのライセンス契約に基づいて「オレオ」や「リッツ」、「プレミアム」、「チップスアホイ」の4ブランド品を製造販売してきた。

 これら4ブランド品の契約解消により、ヤマザキ・ナビスコは年間売上高の約4割に当たる150億円分の製品を失うことになる。8月末まで契約が継続するため、今2016年12月期の業績に与える影響は数カ月分にとどまるものの、ヤマザキ・ナビスコの通期の営業利益は8億円程度の減益が避けられないだろう。
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 8月2日、山崎製パンは2016年12月期の中間決算を発表した。ヤマザキ・ナビスコは、チップスターなどの好調により、上期こそ4億円の増益となったが、9月からは主要製品が抜け落ちる。

 社名をヤマザキビスケットに改め、新ブランド「ルヴァン」を投入することで、オレオなどの穴埋めを図る構えだが、一部地域では同業のカルビーが、チップスターの競合品に当たる「ポテトチップスクリスプ」の販売を開始しており、下期は茨の道となりそうだ。

 とはいえ、山崎製パン全体の上期(2016年1〜6月期)業績は、いたって好調だった。売上高5206億円(前年同期比2%増)、営業利益194億円(同50%増)で、営業利益は期初予想を46億円も上回った。ここ10年間で最高の水準となっている。

■ 「超芳醇」シリーズが貢献

 上期の営業増益を牽引したのは、お家芸の食パンだ。2014年以来の高品質・高付加価値路線が奏功し、売上数量の伸び以上に平均単価が上昇した。

 特に、2つあったブランドを2月に一本化するとともに品質を向上させた「超芳醇」シリーズの貢献が大きい。以前はスーパーなどで安売りの目玉となることが多かったが、高品質を訴求することで、値下げされにくい定番品売り場での取り扱いが増加。「稼げるパン」へと変貌を遂げた。

 同じく2月にリニューアルした「ダブルソフト」や、看板製品の「ロイヤルブレッド」も、価格を維持しながら売り上げを伸ばした。小麦をはじめとする原材料価格の低下や、不二家など子会社の採算改善も追い風となり、企業の稼ぐ力を示す営業利益率は、前期の2.5%から3.7%まで改善した。

 好調な上期業績を反映し、 今2016年12月期の通期計画を上方修正した。営業利益の増額幅は40億円にとどまり、上期に上振れした分(46億円)を下回るものの、修正計画では前期比25%の増益を見込む。

 オレオなどの販売終了の影響を最小限にとどめ、力強い成長を持続できるか。国内製パン業界の盟主は今、大きな転換点にある。