伊藤園、紅茶飲料テコ入れ−“新・本物感”で浮上目指す

一強“午後の紅茶”を崩せるか

 伊藤園は10月3日に、紅茶飲料「ティーズ ティー」ブランドを刷新する。フルーツティーが中心のニューヨークスタイルから、コンセプトを“新・本物感”にあらため、容器も新デザインに変更する。同ブランドは北米発の紅茶飲料として2009年に販売を開始し、若い女性層を中心に支持を拡大した。だが、ここ数年は果実などで香りを付けたフレーバーウォーターなどに押され、販売数量が減少。ピーク時の約半分に落ち込んでいた。同社はブランドをテコ入れし、浮上を目指す。

 国内の紅茶飲料市場は、キリンビバレッジの「午後の紅茶」ブランドが5割を超えるシェアを持つ。午後の紅茶は30年の長い歴史があり、スーパーやコンビニエンスストアといった、消費者の支持を得られなければ生き残りが難しい小売店の“手売り市場”に深く浸透しているのが強みだ。

【販売数量が失速】

 一方、後発の伊藤園は“北米発のニューヨークスタイル”や“フレーバー・フルーツティー中心の品ぞろえ”により、若い女性層などの支持を拡大した。ただ、フレーバーウォーターや健康志向を取り込んだドリンクヨーグルトの台頭などで、販売数量が失速。15年4月期の販売金額は前期比17.4%減の約105億円、16年4月期は同42.3%減の約60億円に落ち込んでいた。

「ピーチティーの好調などで登場直後は良かったが、(消費者の)フレーバーウォーターへのシフトが痛かった」と本庄大介社長は振り返る。今回の全面刷新はティーズ ティーブランドでは初めて。“負けられない戦い”になる。

【素材を厳選】

 刷新するティーズ ティーブランドは基本商品が「日本の紅茶」をはじめ、ダージリン、ほうじ茶ラテ、アップルティー、ピーチティーの5種類。厳選素材をより強調した。日本の紅茶は国産の茶葉を100%使用。「和菓子など、さまざまな食事の供に合う」(同社)という。同社は「日本人はもともと、お茶を好む」とし、新シリーズで「あらためてお茶の良さをPRする」考えだ。

【認知度を拡大】

 ペットボトル容器は従来の500ミリリットルから450ミリリットルに減量し、形状もスリムなものに変更した。持ちやすさとともにバッグに入れやすくし、新しい飲用者を増やす狙いがある。認知度拡大のため、発売前にインターネットを介したサンプリングや動画配信を行う。

 缶コーヒーや炭酸飲料、緑茶の各飲料市場が強さを示すのに比べ、紅茶飲料市場は縮小気味だ。“一強”のキリンビバを除き、目立った新商品が少ないことも影響している。伊藤園のブランド刷新が、停滞する紅茶市場全体の活性化をもたらす原動力となれるかどうか。同社の生き残りと商機も、そこにある。