東芝歴代3社長「粉飾認識」 不正会計で監視委、検察に告発協議要請へ

東芝の不正会計問題で、証券取引等監視委員会が、田中久雄元社長ら歴代3社長が粉飾を認識していた疑いが濃厚だとする調査結果をまとめ、検察当局に伝えたことが19日、証券業界関係者への取材で分かった。監視委は今後、3人の刑事告発に向けた調査を本格化させるもようだ。7月に刑事訴追に否定的な見解を示した検察には、正式な告発協議を求めるとみられる。

 監視委によると、東芝はパソコン事業で、部品の調達価格が外部に漏れないよう一定金額を上乗せした価格で台湾の製造委託先に販売し、その分を上乗せした価格で完成品を買い取る「Buy(バイ)−Sell(セル)取引」を悪用。四半期ごとの決算期末に大量の部品を販売することで、一時的に得られる上乗せ分を利益として計上していた。監視委はこの利益計上が粉飾に当たるとして、田中元社長と西田厚聡(あつとし)、佐々木則夫両元社長の3人について、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)罪での告発に向け、調査を進めてきた。

 証券業界関係者によると、パソコン事業では佐々木社長時代の平成21年以降、バイセル取引の悪用によって得られる一時的な利益を見込んだ予算を作成していた。予算は各事業部門ごとに作成していたが、パソコン事業だけは会長だった西田元社長と佐々木、田中両元社長が主導して作っていたという。

 昨年、外部の弁護士らで構成する東芝の第三者委員会の調査に対し、3人はいずれも不正会計の指示や認識を否定したが、監視委は予算作成を主導していたことから粉飾を認識していた疑いが濃厚だと判断。関係証拠とともに調査結果を検察当局に伝えた。

 監視委が告発する場合、検察と「告発問題協議会」を開くが、事前の情報交換で検察が刑事訴追する方針を固めた場合に限られるのが通例。今回は検察が7月に「証拠上、疑問点が多く、立件は困難」との見解を監視委に伝えており、開かれない見通しだったが、監視委は「新たな証拠が加わった」として開催を求めるとみられる。