GDPかさ上げ、世界が躍起 欧州は麻薬取引・売春まで算入

■低成長、健全化目指す

 世界経済がリーマン・ショック後の低成長に苦しむ中、各国で国内総生産(GDP)をかさ上げする動きが広がっている。各国とも研究開発費や戦車、艦艇購入費の加算を認めた新国際基準の導入を進めており、それぞれ名目GDPが1〜4%ほど押し上げられる見通しだ。ただ、欧州では、麻薬取引や売春といった「地下経済」を取り込む動きもあり、やみくもなGDP拡大を疑問視する声も上がっている。

 世界各国が導入を進めているのは国連が2009年に採択した「2008SNA」と呼ばれる算定基準だ。

 日本は16年7〜9月期のGDP改定値から採用。内閣府は今月15日、新基準の採用で、11年の名目GDPが491兆4千億円と旧基準の471兆6千億円から4・2%加算されると発表した。導入済みの国で大きく増えたのは米国(3〜3・6%)で、中国は7月、15年のGDPが1・3%上乗せされると明らかにした。

 押し上げの大きな要因は、付加価値を生む投資として重視されるようになった研究開発費が設備投資に組み入れられたことだ。このほか戦車などの防衛装備品を橋、道路と同じく公共投資に算入。防衛装備品分で日本は0・1%、米国は0・5%押し上げられるとみられる。

 欧州で目立つのは違法な経済活動を算入する動きだ。国連基準でもともと算入が認められており、14年に英国、イタリアなどが組み入れを表明した。英国は非合法分で0・7%押し上げられるとの試算もある。日本は算入していない。

 ユーロ圏各国は財政赤字をGDP比3%以内に抑える厳しい健全化目標があり、GDPのかさ上げで目標達成を容易にする狙いもあるとみられる。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「生活の豊かさを計るGDPに、違法な活動をどこまで含むのが許されるのか難しい問題だ」と指摘する。犯罪抑制がGDP縮小につながるという二律背反に欧州は直面しかねない。