長城「修復」で責任者処分へ=保護意識低く、破壊進む―中国

中国の世界遺産「万里の長城」で行われた修復作業への批判の高まりを受け、当局は責任者を処分する方針だ。

 長城は、自然風化に加えて、れんがの盗難もあり破壊が進んできた。予算や人員が限られる中、当局の文化財保護に対する意識の低さも露呈した。

 「700年の歴史的国宝を無残な姿にした」と非難されているのは東北部・遼寧省で行われた地元当局による作業。この地域は、観光開発が進んでおらず「最も美しい長城」と呼ばれてきた。2013〜14年に修復作業が行われたが、最近になって、コンクリートで造った道路のようになった長城の写真がネットを通じて広がった。

 当初、当局は作業に問題はなかったとする立場を示した。しかし、世論の反発が強まると方針を転換。27日の記者会見で、少量のセメントが使われていたことを認め、責任者を厳しく処分する方針を示した。

 長城の荒廃の広がりは以前から指摘され、中国政府は06年に保護するための条例を制定した。しかし、周辺住民が住宅の資材にしたり売却したりする目的でれんがを盗む例は後を絶たない。明朝時代に造られたといわれる約6260キロの城壁の3割がすでに消失したとされる。

 共産党機関紙・人民日報のニュースサイト・人民網によると、中国長城学会の董耀会副会長は、今回の当局の作業について「長城への畏敬の念が欠けている」と批判。また、各地で損傷が進む背景について、長城がある404地区のうち50%以上が貧しく、地元当局の人員も限られており、十分な管理ができていないと指摘した。